米Microsoftは5月12日(米国時間),今後数年間におけるWindows Server製品のロードマップを明らかにした。Windows Serverは今後,メジャー・アップグレードが4年ごとに,マイナー・アップグレードが2年ごとに行われる。メジャー・アップグレードである「Longhorn Server」(開発コード名)は2007年に,マイナー・アップグレードである「Windows Server 2003 Release 2(R2)」は2005年に出荷される。この計画は,Windowsサーバーの開発責任者であるBob Mugliaシニア・バイス・プレジデントがプレス・ミーティングで明らかにしたものである。

 Muglia氏は「われわれは今後数年間,3つの方針に基づいてサーバー製品の開発を続けていきます。その方針とは,Dynamic Systems Initiative (DSI),Trustworthy Computing,そして.NETです。これらはいずれも,ユーザーに利益をもたらす取り組みです。今回,何年にもわたるサーバー製品のロードマップを明らかにしたのは,企業ユーザーがシステム投資計画を立てやすくなるように配慮したためです。従来のような融通の利かないリリース・サイクルは改めました」と説明している。

 現在,Windowsは,Windowsサーバー,Windowsクライアント,Windowsコア技術という3つのパートに分割されている。2年に一度行われるマイナー・サーバー・アップグレードは,直前のメジャー・リリースと同じコアまたはカーネルを使っている。それに対してメジャー・リリースでは,互換性を損なう可能性を含んでいるが,製品に対するニーズに基づいて,数多くの変更点が加えられる。

 実際のカレンダを見てみよう。Windows Serverのリリース・サイクルは以下のようになる。

 2004年(今年)は,Windows Server 2003 Service Pack 1(SP1),Windows Server 2003 for 64-Bit Extended Systems,Windows Update Services(WUS)のような多数のフィーチャー・パックが,年末までに登場する。

 2005年は,Windows Server Longhorn Beta 1とWindows Server 2003 Release 2(R2)が登場する。Windows Server 2003 R2の正式名称はまだ決まっていない。従来Windows Server 2003 R2は,2004年半ばに登場するといわれていた。

 2006年は,Windows Server Longhorn Beta 2とWindows Server 2003 Service Pack 2(SP2)が登場する。Muglia氏は,Windows Server 2003 SP2の対象は,オリジナルのWindows Server 2003とWindows Server 2003 R2であると述べている。MicrosoftはWindows Server Longhornを2007年に出荷する予定だ。Longhorn Clientの出荷より6~9カ月遅れることになるという。

 2009年には,Windows Server Longhorn R2とWindows Server Longhorn Service Packを出荷する。

 各製品について見ていきたい。Windows Server 2003 SP1には, 先にWindows XP SP2に搭載される「Springboard」と呼ばれるセキュリティ技術の一部が実装される。ほかにも,(1)ロール・ベースのインターフェースを持つ新しいセキュリティ設定ウィザード(従来のセキュリティ設定エディタに追加),(2)検査機能を強化したVPNクライアント,(3)クリーン・インストールの際にデフォルトで有効になる起動中のネットワーク保護機能――などがある。また,Windows Server 2003 SP1は,Windows Server 2003より10%はパフォーマンスが向上するという。

 Windows Server 2003 64-Bit Extended Systemsは,AMD64(AMD Opteron)やIntelのx86-64(Intel Xeon EM64T)プラットフォーム向けの製品で,Windows Server 2003 SP1がベースになっている。Windows Server 2003 64-Bit Extended Systems上では,既存の32ビット・アプリケーションがドラマティックなほど性能が向上するという。データベースの性能は17%向上するが,Microsoftによれば,他の分野の方が性能向上はめざましく,例えばファイル共有は111%のアップ,Active Directoryのスループットは100%以上のアップが期待できるとしている。

 Windows Server 2003 R2も,Windows 2003 SP1がベースになっている。この製品には,企業間でディレクトリ情報を連携させる「アイデンティティ同盟(Identity Federation)」機能が追加される(Microsoftは「Trustbridge」と呼んでいる)。この機能によって,ADのフォレストを利用して,パートナ企業や顧客との間でディレクトリ情報が連携できるようになる。ほかにもR2には,(1)SMB(Server Message Block,Windowsで利用されているファイル・プリンタ共有プロトコル)やターミナル・サービスのプロトコルをHTTPSで利用する機能,(2)統合されたWindows Rights Management Services(Windows RMS),(3)離れたところにある拠点を管理する機能――といった新機能が含まれる。Windows Server 2003 R2は全くの新製品だが,ソフトウエア・アシュアランス(SA)のユーザーであれば,通常のアップグレードと同じように自由にアップグレードできる。

 Windows Server Longhornには,新バージョンのInternet Information Services(IIS),ASP.NET,「Indigo」と呼ばれるWebサービス基盤が含まれる。新しいロール・ベースの展開手法によって,メンテナンス・コストが大幅に削減されるほか,Windows Serverを外部の攻撃からより強固に保護できるという。Windows Server Longhornにはこのほか,「Monad」と呼ぶスクリプトとコマンド・ラインに関する新しい環境など,新しい機能が含まれる。

(Paul Thurrott)