米Microsoftは米国シアトルにおいて開催中の「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)2004」で,タブレットPC向けに開発している技術をノートPCを含むすべてのモバイルPCに反映させることを明らかにした。同時に,今夏の終わりに出荷予定の「Windows XP Tablet PC Edition 2005」(開発コード名Lonestar)の新機能についても公表した。

すべてのノートPCにタブレットPCが組み込まれる
 モバイル・プラットフォーム部門のDarin Fishビジネス開発マネージャは社内の開発体制と方針を次のように語る。「“Microsoftの”モバイル・プラットフォーム部門は,従来はタブレットPC部門だった。われわれの組織は,単にタブレットPCではなくモバイルPCへ集中するために再編成した。われわれがタブレットPCの開発中に得た知見は,すべてのモバイルPCに役立つ。今回,すべてのモバイルPCに“タブレットPCの技術”を与える挑戦をする。われわれは同じグループの中で,1つのチームがモバイルPCの基礎に注力し,もう1つのチームはペンとデジタル・インクに集中する」

 またFish氏は,Microsoftの今後3年間に渡るモバイルPCの戦略を計画している。タブレットPCは,2003年に非常に軽量なノートPCを多機能なノートPCへと発展させ,この傾向は2005年まで続くと見ている。「われわれは,タブレットPCの機能がノートPCの主流に組み込まれると見ている」。2006年に出荷が始まるLonghorn関連製品において,モバイルPCはすべての顧客のニーズを満たすために適合するようになり,デスクトップPCの用途にゆっくり追い付くだろう。PCメーカーは2003年に3800万台のモバイルPCを出荷した。Microsoftはこの数字が2006年までに6300万台へ成長すると確信している。

無償で配られるTablet PC Edition 2005
 Microsoftはソフトウエア会社として,タブレットPCおよび他のモバイルPCを稼働させる基礎となるプラットフォーム(OS)を開発している。そして,ユーザーのためにそのOSを劇的に改良しようとしている。そしてOSを順次アップデートすることを計画している。Windows XP Tablet PC Edition 2005は,すべてのタブレットPCユーザーに無償で提供される。このバージョンでは,文脈を考慮した筆跡認識により劇的に強化されたテキスト入力パネル(TIP)といくつかの新機能が追加される。

Longhornにモバイル機器の未来を詰め込む
 しかし,Longhorn世代の計画は,これよりはるかに刺激的となる。Microsoftは,Longhornの製品ラインの基本に,これらのどの機能を含めるかをまだ決めていない。また,どれがタブレットPCおよびノートPCで利用可能かといったリストで迷っている。Microsoftはパワー・マネージメント,マルチ・モニターのサポートなど,製品の基本的な機能を強化するだろう。さらに,以下のような新しい機能が開発中である。

補助ディスプレイ:次世代のモバイル・デバイスは,PIM(個人情報管理)データを見るときにカバーを開かないで済むように,そのカバー内に小さなディスプレイが組み込まれる。

デバイスとのファイル同期:Longhornの統合同期コントロール・パネルを使用して,ユーザーはデスクトップ・パソコンと,タブレットPCやノート・パソコン,PDA,携帯型オーディオ装置,他の携帯型装置との間でデータを同期できるようになる。

コミュニケーションとコラボレーション:Longhornは,ユーザーに対してファイル共有のために特別な無線通信ネットワークを素早く構築して,あなたの近くで接続している人々を見つけられる。さらに,それは無線プロジェクタの接続や,リアル・タイムで共同作業をしたいユーザーのPCを1対1や1対多でワイヤレス接続などが可能になる。

Mobility Center:Microsoftは,Longhornのための「Mobility Center」と呼ばれている集中管理機能を,OSの中のモビリティ機能として設定することを計画している。

位置認識:システムがどのようにこの機能を動かすかは流動的だが,MicrosoftはLonghornをインストールしたPCに,位置認識機能の追加を計画している。その結果,家,職場,学校,または別の場所など,あなたがいる場所に応じてシステムの見え方が変化する。

ペンとシェルの統合:Longhornはインク・ファイル名を標準サポートする。アイコンの名前をスタイラスでたたいて,自分の筆跡でファイル名を書くもの。簡単なウィザードによって名前が入力される。あなたの筆跡を既存のファイル名と比較するだけの手書き認識エンジンが稼働している。これは何百万ものサンプルを備えた通常使う手描き認識エンジンとは別ものである。

「Snipper」と「Flick」ユーティリティ:開発コード名「Flick」と呼ばれる新しいペンのジェスチャ機能は,入力していないとき,または作業の選択を制御しているときに,タブレットPCのスタイラスであなたが確実に機能を実行できるようになる。例えば,あなたは[コピー][張り付け][戻る][進む][取り消し][削除]などのジェスチャを設定できる。開発コード名「Snipper」と呼ばれる別のペン・ユーティリィティは,ベースとなるOSのPowertoyとして提供される。

ペンに最適化されたスキン:ユーザーが手軽にアクセスできるようにするため,Microsoftは1ページの中に必要とするPIM情報を収めたダッシュボード・ページを開発中だ。今年出荷される5~8インチの小型サイズの新世代タブレットPC向けである。ペンに最適化されたスキンは,(1)時刻と予定表,(2)最近アクセスしたドキュメントやアプリケーションへのリンク,(3)直近の7通の未読メール,(4)完了していない直近の仕事,(5)あなたがしばしば使用するアプリケーションへのリンク――などを提供する。このスキンは,デスクトップのユーザー・インターフェースに対して小さすぎるスクリーン上で,Windowsのユーザー・インターフェースの代替になるようにデザインされている。

(Paul Thurrott)