米Microsoftは4月16日,Visual C++のコマンド・ライン・コンパイラの無償提供を始めた。「Visual C++ Toolkit 2003」と呼び,Webサイトからダウンロードできる。Visual Studio .NET 2003に含まれるものと同じ最適化コンパイラで,Cランタイム・ライブラリ,C++標準ライブラリ,C++ 標準テンプレート・ライブラリ(STL),リンカー,サンプル・コード,.NET Framework 1.1が含まれる。Visual C++独自の.NET拡張であるManaged C++やインライン・アセンブラも利用できるが,Microsoftの技術サポートはない。ダウンロードできるのは英語版だが,コンパイラが表示する警告メッセージなどが英語であるだけで,日本語対応アプリケーションの開発もできる。開発したアプリケーションの再配布も可能だ。

 稼働OSはWindows 2000/XP,Windows Server 2003。最適化コンパイラではないVisual C++ .NET Standard 2003のユーザーは,Visual C++ Toolkit 2003をインストールし,適切に設定すると,Visual Studio .NET 2003と同じ最適化コンパイラを利用できるようになる(ただしコンパイラ・メッセージが英語になり,マイクロソフトのサポート対象外)。Visual Studio .NET 2003のユーザーには不要だが,サンプル・コードを参考にしたいユーザーはダウンロードしておくとよいだろう。サンプル・コードは4種類で,内容は次の通り。

・Managed C++を利用した.NETアプリケーション
・コンパイラの最適化を試すプログラム
・コンパイル時と実行時にセキュリティをチェックするプログラム
・テンプレートを利用したプログラム

 なお,Visual C++ Toolkit 2003はコマンド・ライン・コンパイラなので,Visual Studio .NETのような統合開発環境は付属しない。通常はテキスト・エディタでコーディングしたソース・コードを,コマンド・プロンプトでコンパイラ(clコマンド)を起動してコンパイルする。その際,快適に利用するには,clコマンドが格納されたディレクトリを環境変数PATHに設定したり,インクルード・ファイルやライブラリ・ファイルのディレクトリをそれぞれ環境変数INCLUDE,同LIBに設定しておいた方がよい。Visual C++ Toolkit 2003をインストールすると,これらの環境変数が自動的に設定される専用コマンド・プロンプトがWindowsのスタート・メニューに追加される。

(山口 哲弘=日経Windowsプロ)