マイクロソフトは4月19日,Virtual PC 2004日本語版を5月14日に発売すると発表した。Virtual PCは1台のPCで複数のOSを同時に実行できる仮想マシン・ソフト。Virtual PCは実機で稼働する「ホストOS」上の1つのアプリケーションとして動作し,Virtual PCが作り出す仮想的なPC AT互換機上でx86用OSを動かせる。Virtual PCの仮想マシン上で動作するOSを特に「ゲストOS」と呼ぶ。

 Virtual PCは元々米Connectixの製品だったが,2003年2月に米Microsoftが買収した。Connectix製のVirtual PC 5.xに比べると,Virtual PC 2004は次のような機能が拡張されている。
(1)1つのゲストOSに最大3.6Gバイトのメモリー容量を割り当てられる。Virtual PC 5.xでは最大1Gバイトだった。ただし割り当てられるのは,実機に実装したメモリー容量までに限られる。
(2)1つのゲストOSに,最大4つまでのネットワーク・インターフェースを割り当てられる。Virtual PC 5.xでは1つだけだった。
(3)各ゲストOSの設定内容を,XMLファイルに記録するようにした。Virtual PC 5.xではレジストリに記録していた。

 そのほか,ホストOSとゲストOSとの間のコピー&ペースト,ホストOSとゲストOSとの間のファイルのドラッグ&ドロップによるコピー,ゲストOSのサスペンド機能,ゲストOSで操作した内容を元に戻す復元ディスク(アンドゥ・ディスク),一度インストールしたゲストOSを基に複数のゲストOSを作れる差分ディスク機能などを備えている点は,Virtual PC 5.xと同じである。

 Virtual PC 2004の稼働OS(対応するホストOS)は,Windows 2000 ProfessionalまたはWindows XP Professional。ゲストOSとして対応するのは次の通りである。

MS-DOS 6.22
Windows 95
Windows 98/98SE
Windows Me
Windows NT Workstation 4.0 SP6以降
Windows 2000 Professional
Windows XP Professional/Home Edition
OS/2 Warp 4 Fix Pack 15

 Virtual PC 5.xでは,Windows 3.1,Linux,NetWareなどもゲストの対応OSになっていたが,マイクロソフトは「動作するかもしれないが動作検証はしていない。もし動作しなくてもサポートしない」としている。

 価格は,パッケージ版が1万5800円(推定小売価格)。同社のWebサイトから,45日間の試用版が無償でダウンロードできる。ボリューム・ライセンス版の価格は1万1900円(中規模向けのSelect A契約の推定小売価格)で5月6日の発売予定である。

 注意すべき点は,ゲストOSにもホストOSとは別にライセンスが必要なこと。1台のPCであっても,例えばホストとゲストの両方にWindows XPをインストールするには,合計2ライセンス必要になる。なお,2003年10月1日以降にボリューム・ライセンス契約に基づいて取得したWindows XPおよびWindows 2000 Professionalのアップグレード・ライセンスには,1台のPCに2つまでインストールする権利が与えられている。

 Virtual PCは,Windows 2000や同XPが稼働するPCで,例えばWindows 98を動かし,Windows 98用のアプリケーションを利用できる。これを利用してマイクロソフトでは,Windows XPなどの新しいOSでは正常動作しない旧OS向けアプリケーションのユーザーを,Windows XPに移行させたい考え。サーバー用OSが,ホストOSおよびゲストOSの対象になっていないのはこのためである。

 ほかにも,1台のPCで異なるOS環境を同時利用できることを活用して独自開発したアプリケーション・ソフトをテストしたり,操作内容を元に戻せることからPCの操作のトレーニングに利用したりすることもできる。

 また,複数のサーバー機を1台に集約して管理コストを削減することも,仮想マシン・ソフトの用途の1つである。この用途には,ConnectixからVirtual PCと同時に買収したサーバー用の仮想マシン・ソフト「Virtual Server」がある。Virtual Serverは現在ベータ版が公開されている。発売は2004年夏以降の見込みである。

(山口 哲弘=日経Windowsプロ)