ニクソン大統領が中国を訪問したとき以来の大事件だろう。米Sun Microsystemsとその最大の敵,米Microsoftが予期せず包括的な技術提携と和解を実現したのである。SunのScott McNealy会長兼CEO(最高経営責任者)はMicrosoftに対して容赦ない皮肉を述べ立ててきた人物だが,先週金曜日の報道機関向け発表会ではそれをすっかり隠し,MicrosoftのSteve Ballmer CEOに友好的な態度を示していた。

 公の場所で初めて見る組み合わせだった。確かにこのような光景は見たことがない。2人は笑い合い,冗談を飛ばし,友情の証としてホッケーのジャージを交換した。それらにより,これまで両社の間にあった緊張のある関係が誤って伝えられたものであることを示そうとしていた。

 McNealy氏は「これ(合意)によって大きな平和が訪れる。多分,われわれも彼らも成長したのだろう」と言った。だが,これはBallmer氏とMSの会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトBill Gates氏を「バルマーとバットヘッド」(間抜けな2人組のアニメ・キャラクタBeavis & Butt-headをもじっている)と何年も表現してきたのと同じ人物である。McNealy氏はこのようにMicrosoftの人間や製品,技術におかしな名前をつけて発散してきた。例えば,Active Directoryは「Captive Directory(囲い込みディレクトリ)」,Windows CEは「Wince(縮み上がる)」,Windows Meは「Windows More Errors」,Microsoft Office Outlookは「Look Out(ご用心)」,Microsoft.NETは「Dot Not」,Bill Gates氏は「ダース・ベイダー」という具合である。そして,Microsoftを「悪の帝国」と呼んだ。

 先週発表された両社の提携・和解は,昨年の6月にMcNealy氏がデトロイト出身で古い友人であるBallmer氏に電話したところから始まった。そして停戦を臭わせた。McNealyによれば「私はこういったんだ。『どうだい,スティーブ。われわれはどうして今まで疎遠だったんだろう。ゴルフをやらないか,日取りを決めようよ』」と言ったという。そして2人は実際にゴルフをプレイした。McNealy氏によると,4ラウンドだった。そして溝を埋めた。それからこの2社は共存に向けて動き始めた。

 SunにとってこのMicrosoftとの合意は幸先がよい。ドット・コム・ブームにのって記録的な稼ぎを実現した後,Sunは財務的な苦境に陥った。顧客は減り,UNIXベースのサーバーはLinuxやWindowsが動作するより低価格のPCサーバーに押されていった。今回の合意でMicrosoftから支払われる16億ドルにより同社はいくらか持ち直すだろう。

 だが,別の発表でSunはコスト削減のため,従業員の9%に当たる3300人を解雇するとしている。3月31日期の四半期決算は,7億5000万~8億1000万ドルの損失の見込みで,アナリストの予想を超えている。会社の規模に比較して約5ドルの株価は見劣りする。ドット・コム・ブームのころのSunは怪物のような会社だったが,その面影は現在ない。

 しかし,規模がどうなろうとSunは変身する会社である。同社は新しく社長兼COO(最高執行責任者)としてJonathan Schwartz氏を任命している。同氏は,Sunをソフトウエア・ベースの会社として立ち直らせる考えだ。独自のUNIXハードウエアへの依存を減らし,AMDのOpteronやIntelベースのシステムに力を入れることになるだろう。

 一方のMicrosoftは,特定の領域では協調し,技術を共有するだろうが,サーバーの市場ではSunとの競合が続くだろうという。これは健全なことだ。Ballmer氏は「われわれは競争を続けていく。これは明らかである。今日はあえてやらないが,今後はわれわれの製品が優れている点を強調していくつもりだ」と発言した。

(Paul Thurrott)