米国マサチューセッツ州にある大手ストレージ・ベンダーのEMCが12月15日,仮想コンピュータ・ソフト・ベンダーである米VMwareを6億3500万ドルで買収して,世間を驚かせた。この取引によってEMCは,ユーティリティ・コンピューティング市場と呼ばれる分野に事業領域を拡張し,ソフトウエアによる売り上げを強化することになる。

 EMCにとってVMwareの買収は,バックアップ/リカバリ・ソフト・ベンダーである米Legato Systemsの買収と,デジタル文書管理ソフト・メーカーである米Documentumの買収に続くものだ。2社はいずれも高収益のソフトウエア会社であった。これらのソフトウエア会社をまとめて取得したことで,ストレージ・ハードウエア市場がますます日用品化していく状況を乗り越えていこうという,EMCの意図が明確になってきた。

 「顧客はITインフラの管理をシンプルにしたいと思っている」と同社社長兼最高経営責任者(CEO)のJoe Tucci氏はいう。「これはストレージを超える挑戦だ。今までサーバーとストレージ仮想化は独立した存在だった。今日,EMCは2つの世界の融合を進めており,EMCの経営資源と理念,そしてVMwareのサーバー仮想化技術とパートナーシップによって,サーバーとストレージの仮想化技術を市場に送り出せると思う。われわれは将来ともに栄える市場を探いていく」。

 VMwareは仮想コンピューティング環境を作り,1台のマシン上で,複数のOSを独立して稼働させることが可能だ。しかもそれらは簡単に管理できる。このソフトの典型的な利用法としては,企業ユーザーが主要なサーバーを新しいOSにアップグレードする場合,Windows NT 4.0のような古いマシン環境を提供するといったものがある。実際に移行する前に,新しいシステムの展開をテストするときにも使う。また,仮想マシン環境はオンラインで配布できるので,電子商取引のサイトなどホリデー・シーズンで混み合うときに,サーバーを追加するといった状況で有益だ。簡単にコピーして動かしたり,2重化したりできる。テスト環境の構築やバックアップ目的にも使える。

 VMwareの最大の競合相手は,米ConnectixのVirtual PCであったが,Microsoftによって今年の初めに買収されてしまった(買収額は非公開)。Microsoftは最近クライアント版のVirtual PC 2004を発表し,2004年前半にサーバー版を出荷する予定だ。VMwareはMicrosoftと同じくクライアント版とサーバー版を持っている。EMCは将来,VMwareの製品系列にストレージ技術を統合したものを計画しているようだ。

(Paul Thurrott)