デジタル音楽サービス市場は既に混み合っているが,2004年には米Microsoftの参入により,競争が一層激しくなりそうだ。Microsoftは独自の音楽ダウンロード・サービスを2004年に開始して,米国のApple ComputerやBuyMusic.com,MusicMatch/Dell,Napster,RealNetworksなどの仲間入りをすることを認めた。「MSNは来年,音楽ダウンロード・サービスを開始する。後日,その詳細を紹介できるのを楽しみにしている」とMSNグループ・プロダクト・マネージャのLisa Gurry氏は語る。

 現在,この市場は3つのタイプのデジタル音楽サービスに分かれている。1つ目は,AppleのiTunes Music Storeのようなデジタル音楽ダウンロード・サービスである。1曲売れるたびに損失が出る。ハードウエアの販売で儲ける仕組みだ。

 2つ目は,RealNetworksのRHAPSODYのようなデジタル音楽ストリーミング・サービスだ。このタイプは,購読者ごとに健全な利益を生み出す。

 最後は,Napsterのように両方のサービスを提供する形態である。このビジネスでは,ストリーミング購読者から得た利益をダウンロード・サービスの穴埋めに回している。現時点で,Microsoftがどの戦略を採るのかは不明である。

 しかし,1つだけ明らかなことがある。Microsoftはデジタル音楽市場に参入することで,iTunes Music Store以外の音楽サービスが利用しているWindows Media Audio(WMA)9フォーマットの競争力をさらに強化できる点だ。Microsoftは英国で既に「MSN Music Club」という音楽サービスを手掛けている。このサービスは,ユーザーがCDに焼き込み可能な楽曲をダウンロードできるものだ。全米にサービスを展開するための原型になるかもしれない。

 Microsoftの競争優位の1つは,手元にある500億ドルの流動資産のおかげで,サービスが軌道に乗るまでに生じる損失を引き受ける余裕があることだろう。AppleやMusicMatch,Napsterなどの会社は,実は驚くほど少ないリソースで活動している。Appleは同社のサービスが提供したダウンロード数をしきりに宣伝するが,同社はダウンロードごとに損失を出しており,iTunes Music Storeの運営にかかるオーバーヘッドをiPodの売り上げでまかないたい考えだ。しかし,いつか携帯メディア・プレーヤは日用的なアイテムになるだろう。そうなれば,Appleは現在のような高い価格でiPodを販売できなくなる。

(Paul Thurrott)