米Microsoftは7月29日,開発ツール「Visual Studio」の次の2世代の概要を明らかにした。1つは「Whidbey(開発コード)」と呼ばれるバージョンで,2004年後半にリリースされるデータベース管理システム次期版「Yukon(同)」と一緒にリリースされる。もう1つは「Orcas(同)」と呼ばれるバージョンで,2005年後半にリリース予定である。Orcasは,WindowsやOfficeを含め,現行製品から大きく様変わりしたプラットフォームを提供する「Longhorn」世代の製品としてリリースされる(関連記事)。

 ディスカッションでは,より早くリリースされるWhidbeyに関する話題が中心だった。しかしMicrosoftはOrcasについても,新しいユーザー・インターフェースやセキュリティ・モデル,コミュニケーション機能,データ・ストレージなど,Lonhornの様々な特徴を活用できるバージョンであることを強調した。ただし,Microsoftによれば,Whidbeyで開発したアプリケーションやWhidbeyそのものはLonghornでも動作するという。

 サーバーとツール担当の上級副社長Eric Rudder氏は次のように話した。「Microsoftには,包括的で統合されたプラットフォームを提供することで開発者の成功を支援するという哲学がある。今日の顧客は,Visual Studio .NETと.NET Frameworkを使ってプロジェクトを成功裏に展開している。我々のゴールは,これから登場する製品のロードマップを示して,彼らが次の勝利戦略を練るための助けとしてもらうことだ」。このために,WhidbeyはVisual Studio .NETの最初のバージョンで導入されたインフラを引き続き用いている。改良の規模は比較的小さく,Visual Studio .NET 2003と同程度の変更になる。.NET Frameworkがバージョンアップするほか,昔のVisual Basicにあった「エディット・コンティニュ(編集して続行)」機能が復活する。これは,デバッグなどのために中断したプログラムを,編集後に再コンパイルすることなく再開する機能である。

 このほかのWhidbeyの強化ポイントとしてはクライアント・アプリケーションの開発機能を挙げられる。「My」というクラスが搭載され,開発者はキーボードやマウス,プリンタ,スクリーン,レジストリなど様々なリソースに簡単にアクセスできるようになる。基本的にこれらのクラスは各デバイスの機能を.NETベースのオブジェクトとして包み込んだ「ラッパー」になっており,より一貫性のあるシンプルなインターフェースを提供するという。IntelliSense機能も改良された。Wordと似た強力な編集機能が組み込まれる。例えば,開発者がキーワードのつづりを間違うと,正しいつづりの候補を示してくれる。

 Visual Studioのリード・プロダクト・マネージャであるAri Bixhorn氏は,Whidbeyのベータ1の簡単なデモを披露した。このベータ版はテスターに向けて今週になって配られたものだ。Bixhorn氏は,開発環境の新機能をいくつか実際に使って見せた。例えば,ウインドウを開発環境にドッキングさせる新しいユーザー・インターフェースや,ドラッグ&ドロップによる開発機能,スマート・タグを使ってSQL Serverへの接続コードを生成する機能などが紹介された。

 さらに,MicrosoftはVisual Studioユーザー同士のコミュニティを促進しようとしている。Whidbeyにはちょっとしたコード片の提供を他のユーザーに呼びかける「Community Help」と呼ぶ機能が組み込まれる。Community Helpはネットニュース・システムの開発者向けニュースグループと連係して動作する。Bixhorn氏によれば,このアイデアは開発者が各コード量を減らし,既存の優秀なコードの利用を促進しようとするものだという。

 LonghornやYukonについても同じだったが,Microsoftは次期Visual Studioに興味を持つユーザーに対しても10月開催予定の開発者会議「Professional Developers Converence(PDC)」への出席を強く呼びかけている。PDCはプログラマ向けのショウだが,ここにきてにわかに重大な意味を帯びてきた。Longhornをはじめとする様々なテクノロジがお披露目されるほか,出席者にはLonghorn世代のWindows OSの機能を実際に試せるプレビュー版も配布される予定だ。

(Paul Thurrott)