PDAメーカーの米Handspringは6月4日(米国時間),Palmに買収されることを発表した。同社は元々Palmから最初に独立した会社。1990年代末はPalm OSベースのPDAの売り上げを順調に伸ばしていたが,新興のライバルであるソニーの製品にシェアを奪われていた。最近は電話・PDAの一体型製品に活路を求めたが,売れ行きは芳しくなかった。

 「Handspringは,PalmのPalm Solutions Groupと戦略的に合併することにより,これまでになく広い品ぞろえと業界における最も強力なリーダーシップを発揮できる。これによりユーザーやパートナ,株主にまで高い価値がもたらされるだろう。PalmSourceを(Palmから)独立させたこともPalm Economyの成長に寄与する。ライセンス先を増やして,株主への価値を上げるはずだ」(PalmのEric Benhamou会長)。

 しかし,Benhamou会長がいう「Palm Economy」の成長は,骨の折れる仕事かもしれない。PDAの売り上げは,2003年の第1四半期に21%減少した。Palmのシェアはまだ業界で最大だが,急速に落ちており,ライバルであるソニー,Hewlett-Packard(HP),Dellに迫られているところだ。

 この合併で最も興味深いのは,Palmの共同創業者Jeff Hawkins氏とDonna Dubinsky氏が同社に戻ることである。Hawkins氏はオリジナルのPalmデバイスの発明者で,Dubinsky氏は1998年のHandspring設立までPalmのCEO(最高経営責任者)だった。2人は当時,親会社3Comとの政治的な争いでPalmを離れた。

 HandspringはPalm OSのライセンスを受ける最初の会社になった。Visorというハンドヘルド機は2~3年間非常によく売れたが,結局,単なる他社の刺激材料だった。Palmが自身のPDAを改良したほか,ソニーのCLIEやHP/Compaq iPAQなどのデバイスが押し寄せてきた。

 Handspringの電話・PDA一体型機「Treo」への戦略転換は,期待された成功からほど遠いものだった。同社のマーケット・シェアは過去3年間減っていった。しかし,Palmはこの合併によってTreoを同社の製品ラインに加える。従来型とマルチメディア型,ワイヤレス型,スマートフォン型という無敵の品ぞろえになる。Windows CE .NETでそこに勝負を挑む会社は少ししかないと思うが,確かに無敵である。