現在ネットワーク・ストレージには,ファイル・サーバーとして扱えるNAS(Network Attached Storage)とサーバーの大容量ストレージであるSAN(Storage Area Network)という2つの異なる仕組みが存在する。それが近い将来,この違いを意識する必要がなくなるという。この度来日した,NASの大手ベンダー,米Network Applianceの共同創業者であるジェームス・ラウ最高戦略責任者兼上級副社長が,日経Windowsプロのインタビューで語った。
「ネットワークの世界のことを考えてほしい。1990年代初頭は,ルーターを買うかスイッチを買うか,管理者が選ぶ必要があった。しかし技術の統合が進んだ現在,例えば米Cisco Systemsの製品を買えば,ルーターとしてでもスイッチとしてでも使うことができる。それと同じことがストレージの世界でも起こる」とラウ上級副社長。
この流れの先駆けとなるのが,同社が2002年10月に発表した「FAS900シリーズ」だ。数千万円クラスの高価な製品ではあるが,SANとしてでもNASとしてでも使用できる。FAS900を投入することによって同社は,「NFS(Network File System),CIFS(Common Internet File System),ファイバ・チャネル(FC)を使ったブロック・アクセス,iSCSI,これらすべてのサービスを,単一のハードウエア,プラットフォームで提供可能になった」(ラウ上級副社長)と強調する。
ストレージの世界における“パラダイム・シフト”はこれだけではないという。「バックアップでも,テープではなくハードディスクを使用するという新しい傾向が広まり始めている」(同)。同社では2002年に,バックアップやアーカイブ目的に特化したストレージ製品「NearStore」を発売したが,発売1年で同社の売上高の1割を占めるようになるなど,非常に成功しているという。NearStoreはハードディスクにATAディスクを使用している製品である。同社の他製品はディスク・インターフェースにFCを使っており,NearStoreはコストを抑えた低価格版である。
「バックアップは今までテープだけを使うのが一般的だったが,機能の観点から考え直すべきだ。災害に備えるのであれば,地理的に離れた場所にテープを保管する必要がある。その一方で,バックアップの時間を短縮したり,障害復旧を高速化したり,バックアップ・データをひんぱんに参照したいのであれば,ハードディスクを使用した方がよいだろう」(同)。