米国時間5月6日朝に行われたWinHEC 2003の基調講演で,米Microsoft会長のBill Gates氏はHewlett-Packard社と共同開発した「Athens」と呼ぶPCを公開した。Athens PCはコンシューマではなくビジネス・ユーザーを対象としたもの。本体と1本のケーブルで接続する高解像度のワイドスクリーン・ディスプレイや,ワイヤレスのキーボード/マウス,ディスプレイの横に置くハンドセット型電話などで構成している。Gates氏によれば,このプロトタイプのポイントはPCと通信および連携を融合した次世代機器のひらめきをハード・メーカーに与えることだという。

 Gates氏は,「ハードウエア業界とMicrosoftは,ハードとソフトの相乗効果でこれまでにない世界を実現し,次のPC革命の波をリードしていく。結果として,革新的な製品は顧客の仕事やコミュニケーション,学習,息抜きなどの役に立つだろう。「Athes」というPCのプロトタイプは,ソフト会社とハード会社が設計段階から密接に連携した場合の驚くべき可能性を示す,1つの典型的な例である」と語った。

 基調講演では,MicrosoftのHardware Innovation Groupで主任プログラム・マネージャーをしているChad Magendanz氏が,ハードやソフトを組み替えた,いくつかの魅力的な製品例について語った。例えば,現在は数千ドルもする23インチのディスプレイの代わりに20インチのディスプレイを搭載した製品を,2004年半ばに400ドル以下の小売価格で提供する。このディスプレイには,Bluetoothのハンドセットが付属するだけでなく,ポートが横に付いていたり,新しい留守電や電子メール,保留中の会議などがある場合には点灯して知らせるライトが上部にあるといった特徴がある。同様に,キーボードにはソフトウエアを起動するボタンが付いている。

 Athens PCは,次世代WindowsのLonghornを使っており,2秒以内での起動やUSBフラッシュ・カードを使ったセキュリティ,指紋認証といった機能をもつ。電話のハンドセットを使っているときは,Outlookの接続リストやMessenger上での表示が「電話中」に変わる。電話をかけると,Athens上に電話している相手の情報を表示し,その相手とこれまでにやり取りした電話メールや電話の内容を一覧表示したり,以前の打ち合わせに使った記録やドキュメントを表示してくれる。Magendanz氏によると「これらの機能は電話をより効果的にする」と記している。

 また,「邪魔しないでください」という表示をドアにかけるのと同じように,ネットワーク上で呼び出しを拒否するように状態を変更することもできる。この設定では,呼び出しがあると自動的に留守電に転送されるため,作業を中断されることがない。ボイス・メッセージを使った電子メールを送信することもできる。

 Gates氏はさらに講演の中で,他のハードウエア技術を使ったAthensの拡張についても語った。例えば,AMDのAthlon 64/OpeteronやIntelのItanium 2を使った64ビット対応,Dynamic Systems Managementと呼ぶエンタープライズ向けの自動操作,Trustworthy Computingなどである。もちろん,次世代WindowsのLonghornで予定するハードウエア対応の強化も含まれる。