米Microsoftは5月6日(米国時間),ニューオリンズで開催するWindowsハードウエア技術者向けの会議「WinHEC 2003」の前夜イベントで,次期デスクトップOSである「Longhorn」(開発コード)のデモを初めて実施した(画面例)。Longhornは2004年末~2005年に出荷する予定である。

 Longhornはグラフィックス機能を強化している。従来バージョンのWindowsとは全く異なる新しいデスクトップ画面は,非常に見栄えがする。WinHECのデモでは,早期テスト・バージョンを使用して高度なアニメーション効果やウインドウ・サイズのスムーズな拡大・縮小,半透明なウインドウ表示などを披露した。

 従来バージョンのWindowsは,Windowsデスクトップを単一のデスクトップ・サーフィス(面)上にレンダリングしている。そのため各ウインドウは,単一のサーフィスを分け合って,自分の表示領域を確保している。また各ウインドウは,他のウインドウに隠れていない“自分の領域”だけにしかレンダリングしない。

 それがLonghornでは,各ウインドウが固有のサーフィスを確保している。他のウインドウとは完全に独立しており,他のウインドウがあるかどうかにかかわらず,ウインドウ全体のレンダリングを常時実行する。同様にデスクトップ画面では,開いているウインドウすべてが,1秒間に何度も同時にレンダリングし続ける。

 当然のことながら,このような変更が加えられたLonghornは,従来バージョンのWindowsに比べて,極端に高い水準のグラフィックス・リソースを必要とする。しかしMicrosoftは,「現在ほとんどのPCは3Dグラフィックス機能を搭載しているため,問題ない」と説明している。3Dグラフィックス機能を搭載しないPCの場合,Longhornの新しいグラフィックス機能を完全に利用することはできないが,Microsoftはグラフィックス機能に複数のモードを設けることによって対応するとしている。

 モードは3つある。「ベースライン・モード」では,Windows 2000と同様の機能だけが使用できる。この場合,ソフトウエア・レンダリングのみを使用する。次の段階として「ティアー1エクスペリエンス」と呼ぶモードがある。ティアー1では,Longhornの新グラフィック機能の一部を提供する。このモードに要求される3Dグラフィックスのハードウエア・スペックは,「DirectX 7」に求められるスペックとほぼ同じものである。ティアー1には,ノートPC向けの「低消費電力モード」も存在する。「ティアー2エクスペリエンス」では,Longhornの全機能を利用できるようになる。ティアー2は,最も高度なハードウエア・スペックが必要で,その程度は「DirectX 9」に求められるスペックと同等だという。

 今回実施されたデモには「Longhorn build 4015 desktop」が使用された。このLonghornでは,ウインドウを切り替えると,各ウインドウが風になびく旗のようにゆらめきながら画面に現れる。ウインドウの透明化には複数のレベルがあり,その表現力は従来のWindowsの中で最もよいもののように思われた。

 また,ウインドウのサイズを拡大・縮小したとしても,そのクォリティが失われることがないという点も重要である。つまり,従来バージョンのWindowsでは,最小化した画面をタスク・バーのボタンで選択していたが,Longhornでは画面を最小化したとしても,その画面にどのような内容が表示されているのかを,最小化したままでそれなりに判別できるのである。

 既存のアプリケーションでも,特に手を加えることなくLonghornの新しいグラフィックス機能を利用できることも重要である。Longhornで稼働するすべての既存アプリケーションは,新しいアニメーション機能や透明化機能などの画面効果を自動的に利用できるのだ。今回のデモで利用されたアプリケーションは,Windows XPで利用できるものばかりである。それらは,メモ帳,コマンド・プロンプト,タスク・マネージャであった。

 また,「Star Wars Episode II」の動画を再生したデモも非常に興味深かった。動画をリアルタイムで表示しながら他のアプリケーションを起動ても,動画再生のスピードやレンダリング品質に何の影響も出なかったからだ。しかもこのデモは,1.5GHz動作のPentium 4に384Mバイトのメイン・メモリー,グラフィックス・カードは「ATI Radeon 9700」というロー・レベルのパソコンで実行された。これには非常に驚いた。