200ドル台の格安コンピュータが台頭してきたことがWindows OSの脅威になりつつあると報じた記事(関連記事)に対応して,米MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は,Windows OSの価格を引き下げる計画はないと語った。米小売大手のWal-Mart で販売されているエントリ・レベルのLindowsOS 搭載パソコンが,Windows XP Professionalのパッケージと同じ200ドルで販売されている事実にもかかわらず,MicrosoftはWindowsの価格が開発費に基づいて決まるものであり,Windowsを必要とする消費者はその料金を払うだろうと見ている。

 Steve Ballmer氏は,敵対する何かの動きにより,LindowsOSマシンのコストが実際には200ドル以上あるのに,200ドルで販売されていると話した。「だれかがそのハードウエアに補助金を出している」とBallmer氏は米国フロリダ州で開催された米Gartnerの技術コンファレンスの会場で語った。「だれかが損をしている。人々は電源装置やプロセッサのコストがどれほどか知っている」と続ける。

 しかし,Ballmer氏はこの方法がビデオ・ゲーム市場でソニーや任天堂,Microsoft自身が実行する正しい戦略であることを知るべきだ。つまり,ゲーム機のハードウエアで損失を出しても市場に種をまき,ソフトウエアの販売でもうけるやり方だ。Wal-Martの格安コンピュータは,これと全く同じではないだろうか?

 十分にありえる話だ。Wal-Martのような大手の小売りは,新規客を店舗に呼び込むため,しばしば赤字覚悟で特定商品を安値販売することがある。例えば米おもちゃ販売大手のToys-R-Usは,おしめを10年間以上も赤字販売していた。

 しかし,パソコンは高額商品である。しかも,米Dell Computerや米Gatewayのようなパソコン・メーカーのローエンド商品は,Wal-Martの商品の価格の2倍以上も高い。もしWal-Martが本当にそんな赤字販売をしているなら,小売業界では初めての試みだろう。

 Windows OSの価格は既に十分安い,とBallmer氏は指摘する。小売価格は高いが,Windows OSのほとんどはパソコンにプリインストールされて販売されており,その価格はWindows XP Home Editionの場合で50ドル前後だという。しかも,彼が言う価格は,ここ7年間ずっと変わらないというのだ。Ballmer氏は,Windowsの価格を10~40パーセントくらいカットしてもパソコンの販売増加にはつながらないという。「(Windowsの価格をカットすることは)本当に需要を喚起するだろうか?」と彼は呼びかける。「答えはノーだ。では,それが我々の革新的な開発能力を奪い去ってしまうだろうか?――それはありうるだろう」。