台頭する格安コンピュータが,Windows OSとOfficeが大勢を占めるデスクトップ・ソフトウエア市場で米Microsoftのシェアにダメージを与えつつある。MicrosoftはWindowsとOfficeのライセンスの大部分を新しいパソコンにプリインストールして販売している。しかし,パソコンの価格が下落するにつれ(今年は1台200ドルにまで下がった),パソコンの総コストに占めるWindowsとOfficeのライセンス料の割合が急上昇している。この現象により,パソコン市場ではWindowsやOfficeの代替製品を探す動きが始まっている。

 米大手スーパーのWal-Martが販売する格安パソコンがこの動きをリードしている。Windows搭載機を販売する一方で,各種のLinuxディストリビューションを搭載したパソコンやOSをプリインストールしていない製品も用意している。Wal-Martのパソコンは米Microtel社の製品をWal-Martブランドに変えたもので,ディスプレイなしで通常200~400ドルで販売されている。こうしたマシンは,台湾のVIA Technologies社が製造した低速なIntel互換プロセッサや,遅くて低容量のハードディスク,CD-ROMドライブなど,予想通りの安っぽい部品で構成されている。それでも,いまや最もケチな顧客でさえフル機能のコンピュータを購入できることになる。そして,こうしたパソコンの一部はMicrosoft製品を全くインストールしていない状態で出荷されている。

 オフィス製品では,非Microsoft製品にシフトする動きが続いている。世界で最も急成長しているパソコン・メーカーのSonyは今週,すべてのデスクトップ・パソコンにOffice XPではなくCorel WordPerfect 2002をバンドルすると発表した。さらにノート・パソコンでも,Sonyは低コスト戦略を貫く。多くのパソコン・メーカーがするように,高価なOfficeスイートの替わりに単品のMicrosoft Word 2002を採用する。一部のパソコン・メーカーには廉価版オフィス・スイートのMicrosoft Works 2003を採用するところもある。

 要するに,ソフトウエアのコストが問題なのである。Sonyや他のパソコン・メーカーは,格安のハードウエアにそれより高価なMicrosoft Officeを搭載しても顧客の支持を得られないと考えている。他のいかなるシステム・コンポーネントと同様に,パソコン・メーカーは価格の観点からバンドルするソフトの再評価を進めている。そこで高すぎると感じれば,ソフトウエアを絞るか,安価な代替品に置き換えている。

 数年前,Microsoftはパソコンが1台製造されるたびに厚かましく金を稼げるようになり,現在では年間数億台のパソコンから得られる収入を頼りにしている。しかし,コンピュータがより日用品となるにつれ(皮肉にも,これはMicrosoftのおかげである),以前より安い値段で販売されるようになった一方で,Microsoft製ソフトウエアのコストはこのトレンドに見合うだけ下がっていなかった。アナリストたちは,Microsoftが来春出荷予定のOffice 11に低価格バージョンを追加して,この状況に一部対応するだろうと見ている。しかし,多くのメーカーは当面,Microsoft以外の代替製品を探すことになりそうだ。