米Microsoftは8月5日,米国司法省(DOJ)に提案した独占禁止法上の和解案に伴い,4つの対策を実行すると発表した。同社によれば連邦判事はこの和解案を受け入れるかどうかをまだ決定していない。Microsoftによると,これらの条件を今の段階で実行することにしたのは,司法省との合意がいくつかの予定期限を設定しており,そのうちの4つの期限が今月中になっているためだという。

 同社は声明の中で「(当社の)提案した和解案は地方裁判所に受け入れられていないが,訴訟が審議中である間にMicrosoftは和解案のうちのある条件を実行することに同意した」と書いている。Microsoft社上級副社長のBrad Smith氏と弁護団代表は同社が以下の準備を実行すると語った。

1)Windows XP Service Pack 1を今夏に提供
 Smith氏は同社が今夏にWindows XP Service Pack 1(SP1)を出荷する計画を進めており,さらに8月28日かそれ以降に出荷すると言及した。XP SP1はエンドユーザーとPCメーカーが,5つのキーになるミドルウエア・コンポーネント,つまりInternet Explorer(IE),Outlook Express,Windows Media Player(WMP),Windows Messengerそして MicrosoftのJava仮想マシン(VM)へのアクセスを隠せるようにするUIの変更を含んでいる。ベータ・テスターやPCメーカー,そして司法省からのフィードバックに基づいて,Microsoftは各製品のミドルウエアを隠す機能を「よりユーザーにクリアに」するため,XP SP1にさらに変更を追加するだろうという。

2)Windowsのいくつかの内部インターフェース,APIを公開する
 さらに8月28日,Microsoftは先に挙げた5つのミドルウエア・コンポーネントに関係する270以上の内部インターフェースを公表する。Smith氏は,ミドルウエア製品が提供する機能をWindowsがトリガーするためにこれらのインターフェースを使うといった。同社はこの情報をMicrosoft Developer Network(MSDN)でリリースする予定だ。「これらのインターフェースのいずれも以前は明らかにされていなかった」と同氏はいった。

3)新しい通信プロトコル・ライセンス・プログラムを開始する
 Microsoftの和解提案の一部には,同社が8月6日に通信プロトコル・ライセンス・プログラムを開始することが必要になるとしており,Smith氏は同社がそれに従うといった。WindowsデスクトップOS群はWindows Server OS群と通信するためにこれらのプロトコルを使う。Smith氏はMicrosoftがライセンス先に対して,215のインターフェースを開示すると言明した。だたしそのうち100以上は最近文書で公開したという。しかし,司法省との合意に従い,Microsoftはこれらのプロトコルのライセンスを受けることを望む第三者とは,機密保持契約に署名しロイヤリティを支払うように要求するという。「これは貴重な技術である。そしてそれはWindows Serverにある大きな価値を示すものだ。だがわれわれはそれらを合理的な条件やロイヤリティと引き換えにライセンスするつもりだし,われわれの知的財産が守られることを確実にしたいのだ」(Smith氏)。Smith氏によると,ライセンス供与プログラムはタスク・ベースになる。ライセンス先はベース・プロトコルに加えてファイル・サービス処理やプリント・サービス処理,ストリーミング・メディアを含む12のプロトコル・タスクのどんな組み合わせでも選べる。 「これは画期的なライセンス提供プログラム」であり,「その種の最初のものだ」といった。

4)PCメーカーや他のOEMと新しい契約を締結
 この条件は実際には8月1日に効力を発したが,GatewayのようなPCメーカーが,新しいライセンスは実質的にMicrosoftに知的財産を盗ませることになる,と苦情を上げたことへの対応だとSmith氏は述べた。これらの苦情に基づいて,Microsoftはそのライセンスにいくつかの変更を加えて同社が特許を同定する責任を拡大した。「これはわれわれがパートナの知的財産を保護する明示的な義務を負っていることを意味する」とSmith氏は言った。

 司法の命令がないのに自分が提案した和解案の一部を実施するというMicrosoftの決定は,多少の物議をかもしている。なぜなら現在Colleen Kollar-Kotelly判事が,Microsoftと司法省の合意と,9つのいわゆる和解拒否州が提案した修正案の双方を再検討しており,まもなく決定を下すと予想されているからだ。ご存じの通り,Microsoftは,合衆国独占禁止法に違反しており,消費者,競争者,そして自身のパートナにさえ害を与えており,有罪であると裁決されている。