米Microsoftは,米Apple Computerが年2回催しているイベント「MacWorld」の前夜に同社が爆弾を落とした。Mac OS Xの販売を加速するためにもっと努力しなければ,Microsoftは永久にMacの市場から手を引く,というのである。

 多くのMac向け製品の開発者がこの意見に同調している。最近報告されているようにMac OS Xの売れ行きはよくない。OS Xは数百万台のコンピュータに搭載されて無償で出荷されたが,その最新OSに切り替えたのはわずか100万から200万人だけ,と今のところAppleは推測している。

 だがMicrosoftが明らかにした数字のほうが事態をよりはっきりさせるだろう。MicrosoftのOS X向けOffice製品であるOffice v.Xの販売本数は,2001年の発売以来たった30万本に過ぎない。Microsoftは以前,初年度には75万本以上売れると予測していたのだ。

 「Mac OS Xの販売を促進しようという真剣な努力が(Apple側に)なかった。そのチャンスはあったし,我々の意志もそこにあったのだが」とMicrosoftのMacintosh Business Unit(MBU)を指揮するKevin Browne氏は語った。同氏によれば,すでにMicrosoftはもう1つMac向けのOfficeの新版を開発することを決めているが,もしそのバージョンの売れ行きも不振ならMac市場から離れるという。「(次期バージョンの先の話になると)それはさらに予測が厳しい。もし事態が劇的に好転しなければ,我々はAppleと一緒にこのビジネスを見直すことになる」と。

 最近Appleは Windowsユーザーから新たなMac OS Xユーザーを集めるための「スイッチ」広告キャンペーンを始めた。しかし,Microsoftや他のかなり多くのMac OS向け開発会社は,Appleはまず既存ユーザーをMac OS Xに移行させるべきだ,と言うだろう。例えば,Corelは「ビッグ・チャンス」を当て込んで今年始めにOS X向けアプリケーション7本を発売した。しかし,Corelによれば,その顧客の反応はMicrosoftの体験(experience)を裏書きしている。つまり,Macユーザーは,まだほとんどMac OS Xに乗り換えていないというわけだ。Corelの関係者はこの件に関するAppleの反応を「沈黙している」と表現した。

 案の定だが,AppleはOffice V.Xの販売不振についてMicrosoftに責任を押し付けている。Appleの販売戦略担当上級副社長であるPhil Schiller氏は,The Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル紙)の取材に対して,「OS Xの将来について,Microsoftの懸念はまったくの見当はずれ」であり,同社は「自分たちの内部を見直す」べきだと発言した。Schiller氏はOffice v.Xの価格(約400ドル)が高過ぎるとも言った。MicrosoftはOffice v.Xを発売したときに,既存のMac版Officeユーザーに対して大幅な値引き広告をしたにも関わらず,である。Schiller氏はOS Xの見込みについても楽観的で,新しいシステムに切り替えるユーザーの数は今年後半には「うなぎ登りに」増えると述べた。同社は年末には約500万人がOS Xを使っていると予測する。
 Schiller氏とAppleが正しければよいのだが。もし,Microsoftと他の主要ソフトウエア開発会社が,OS Xというみこしを担がないのなら,この新米プラットホームは繁栄するどころか生き残らないかもしれない。