コンシューマ向け電子機器の展示会「2002 The International Consumer Electronics Show(CES)」が1月8日,米ネバダ州ラスベガスで始まった。会場となっているラスベガスのコンベンション・センター(LVCC)には,Microsoftの巨大なブースが出ている。2001年のCESと同様,Microsoftブースはネットワークに接続した一般家庭「コネクテッド・ホーム」をイメージしたものだ。コネクテッド・ホームのほかにも,車載情報端末向けOSである「Windows CE for Automotive」をはじめ,Xbox,Windows XP,Pocket PC,Freestyle,Mira,Windows Mediaについては個別に大きなディスプレイ・コーナーを設けている。

 7日夜にはCES開催に先立って,米MicrosoftのBill Gates会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトが基調講演を行った。近年のGates氏のスピーチは精彩を欠くものが多かったが,今回は実に面白い講演だった。ここで披露した家庭向けの新技術「Freestyle」や「Mira」は実にエキサイティングだ。Microsoftはこれらの実現を1年先のことだとしており,あるMicrosoft社員に至っては,まだ何年もテストをする必要があるとまでいっていたが,そうは思えない。特にFreestyleはかなり成熟した技術に見える。

 Freestyleは,Windows XPをテレビ感覚で操作できるようにする技術だ。Windows Digital Media DivisionのDave Fester氏はFreestyleについて2つの点を繰り返し強調した。1つは,従来のPCのように1度に1人のユーザーが使うことを想定したもの(one foot experience)とは異なり,家族やグループでデジタル・メディアを楽しむという利用形態(ten foot experience)を想定したものであることだ。もう1つはFreestyleがそのten foot experienceの第一世代の製品に過ぎないということである。FreestyleはWindows XPが備えるデジタル・メディア処理機能にアクセスするユーザー・インターフェースの1つに過ぎないという。

 Miraはこれとは全く別物だ。発表こそFreestyleと相前後したが,Freestyleからは独立した技術である。MiraはPCの画面をPC本体から離れたところに持ち運ぶことができる。例えばPCのディスプレイを取り外せるようにする応用が考えられる。通常はPCのディスプレイとして動作するが,取り外すと家中のどこからでもPCを操作できるタブレットになる。通信技術は無線LANの標準であるIEEE 802.11bとWindowsのターミナル・サービスをベースにしている。全く新しい形態のテレビや,台所に設置する端末などへの応用も考えられるだろう。

 Miraのデモは素晴らしかったが,速度の面ではまだまだだ。アイコンやスタート・メニューをクリックすると1,2秒の遅れがある。しかし家庭内の表示装置をすべてコンピュータに接続するというアイデアは素晴らしい。完成が楽しみな技術である。

 Windows Media Technologies(WMT)の次期版「Corona」のトピックも多い。Coronaは様々な構成要素があり,Windows Media Server,Windows Media Player,Windows Media Audio/Videoのコーデック,Windows Media Encoder,そしてSDKなどの新版が含まれる。リリース時期ははっきりしないが,2002年中には完成するだろう。Microsoftによれば,Coronaに含まれるWindows Media Player新版は,Windows XPの様々な機能をフルに活用したものになるという。ただしXP以外の複数のバージョンのWindowsも一部の機能を除いてサポートするとしている。

 Coronaに含まれるWindows Media Serverは,Window .NET Serverに組み込まれる予定だ。WMTに関して.NET Serverにはあと2つ,コンテンツ提供者とエンドユーザー双方に有用な機能が搭載される。1つは「Instant On」機能である。データのバッファリングが劇的に短くなり,エンドユーザーはいらいらしながらストリーミング・ビデオのロードを待つ必要がなくなる。もう1つは「Fast Stream」機能である。これはプレーヤのキャッシュ領域にストリーム・データをできるだけたくさん送り込むことで,映像の途切れなどを抑える機能である。