XPEvent
 米国時間の10月25日,Windows XPがついに米国で正式発売となり,その発売記念イベントがニューヨーク市マンハッタンの中心地タイムズ・スクエアで開催された。このイベントの中で米Microsoftのビル・ゲイツ会長は,「DOS世代(のOS)に終止符を打つ」と語った。

 Windows XPは,これまでのWindows 9x系OSとは一線を画す。XPにはたくさんの新機能があるものの,9x系OSと比べたとき,やはり最大の特徴は「安定性」となる。9x系には古いソフト資産を継承するためにDOSの機能が含まれていたが,Windows XPでは不安定動作の原因にもなっていた旧式の技術/アーキテクチャを一掃。マイクロカーネルをベースにした堅牢なWindows NT/2000系のOSとして統合された。1981年にMS-DOSが登場して以来,実に20年間も受け継がれてきた1つの世代が幕を閉じる。

 ゲイツ会長は舞台上で,DOS世代と決別する「儀式」を行った。「MS-DOSに最後のEXITコマンドを入力する」と語り,歓声の中,PCの前に着席。コマンド・プロンプトに「EXIT」と打ち込んだ。

 するとMS-DOSが,「ハロー,ビル。僕は4億台のPCの中でまだ動いているのに,本当にそんなことをするのかい?」と問いかけてくる。だがゲイツ会長は「Sorry,DOS!」と一声かけてリターン・キーを押し,MS-DOSの画面を消してしまった…。

 SF映画ファンならピンとくるかもしれない。「2001年宇宙の旅」のクライマックス・シーンのパロディである。宇宙船に搭載された人工知能コンピュータHAL9000と宇宙飛行士の会話を,それとなく真似ている。「HAL」という名前は「IBM」をアルファベット順に1文字ずつずらしたものであることは有名な話だが,PCがIBMのものだった時代の技術に決別するための演出として興味深い。

 Windows XPは,既にPCにプリインストールされた形では販売されている(国内でも秋葉原などでプリインストールPCやOEM版が先行発売されたばかりだ)。過去のOSの発売記念イベントよりも,開催の意味は小さいように思える。だがゲイツ会長らは,マンハッタンでイベントを開催することに強いこだわりを見せた。

 イベントの冒頭でゲイツ会長はニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏を招き,「Windows XPの発売イベントはニューヨークで開催するしか考えられなかった」と語った(写真)。9月11日に起こった航空機テロについて触れ,「いつものニューヨークに戻って,ビジネスができるようになった」と,ニューヨークの立ち直りを強調した。これに対してジュリアーニ市長も,「(Windows XPの発売イベントの開催が)ニューヨーク市に大きな自信を与えてくれた」と感謝の意を示した。

(渡辺 享靖=日経Windowsプロ)