マイクロソフトの格安なサーバー・スイート製品「Microsoft BackOffice Server」が,9月28日をもって販売終了になることが明らかになった。マイクロソフトは今後,サーバー製品の単品販売に重点を置く。これに伴って,BackOffice Serverのクライアント・ライセンスである「BackOffice CAL(Client Access License)」も新しいライセンスに置き換える。

 今年4月に出荷したばかりの最新版BackOffice Server 2000は,Windows 2000 Server,Exchange Server,SQL Server,Systems Management Server(SMS)などサーバー6製品で構成される。価格は,サーバー製品をそれぞれ単品で購入した場合の半値以下だ。

 しかし,これほどの低価格でもBackOffice Serverの売り上げは振るわなかったようだ。原因は,製品自体がもつ「歪み」にある。BackOffice Serverに含まれる6製品のうち,1つの企業で同時に必要とする製品は比較的少なく,「不要なものは買わない」というユーザー企業が多かったのだ。

 特に,2つの異なる性格のサーバー製品が1つのパッケージに同居していた影響が大きかった。グループウエアのExchangeやシステム管理製品のSMSなどは全社で一斉導入することが多い「インフラ」的な製品だが,データベースのSQL Serverは様々な時期に稼働するサブシステム単位で導入されることが多い「案件ベース」の製品である。2つのタイプのサーバー製品は導入タイミングや購入の決裁者が全く異なるため,一緒に購入される機会が少なかった。さらに,SQL Serverは通常のクライアント・ライセンス(CAL)に加えて,プロセッサ・ライセンス(クライアント数に関係なく,サーバー・マシンのプロセッサ数で課金するライセンス体系)による購入が可能な製品だ。クライアント数が多いほどプロセッサ・ライセンスを利用したほうが安くなるため,大企業はプロセッサ・ライセンスが適用されないBackOffice Server内のSQL Serverを敬遠しがちだった。

クライアント・ライセンスは新方式に移行

 BackOffice Serverの販売終了に合わせて,クライアント・ライセンスのBackOffice CALも廃止され,10月1日から「Core CAL」という新ライセンスに移行する。Core CALは,Windows 2000 Server,Exchange,SMS,文書管理/ポータル構築ソフトのSharePoint Portal Serverに対するCALのパッケージである。BackOffice CALと比べて,SQL ServerのCALがSharePoint Portal Serverのそれに入れ替わった格好だ。「案件ベース」のSQL Serverを外し,「インフラ」的な色彩の強いSharePoint Portal Serverを組み込むことで,Core CAL全体としての想定利用イメージが統一された。パッケージとしてのBackOffice Serverはなくなるものの,Core CALには4つのサーバー製品に対するCALが統合されているため,ライセンス管理が容易になるし,単品で購入するより安価になるメリットもある。

 Core CALは,10月1日から導入される「Software Assurance」など,新しい一括購入割引制度の下でのみ販売される。Software Assuranceは従来のバージョンアップ・ライセンスに替わるものであり,契約期間(2~3年間)内なら一定の料金で何回でもソフトをアップグレードできるライセンス。Core CALも常にサーバー製品の最新版に対応したライセンスが与えられるようだ。従来のBackOffice CALは,その発売後に登場した最新版のサーバー製品に対応していなかったため,ユーザー企業はBackOffice CALのバージョンアップを待つか別途ライセンスを買い足さないと,最新版のサーバー製品を利用できない問題があった。

 BackOffice Serverは今後,そのまま使い続けてもいいし,単品のサーバー製品としてバージョンアップすることもできる。マイクロソフトの一括購入割引制度(Open LicenseやSelect)を利用してバージョンアップする場合は,新ライセンス制度のSoftware Assurance(SA)を利用しなければならない。Back OfficeのユーザーがSAに移行するための条件は,10月1日時点で最新版(BackOffice 2000)のライセンスを所有していることだ。BackOffice 4.5以前のユーザーは,9月末までにバージョンアップするか,「Upgrade Advantage(UA)」というSAによく似た現行のライセンスを購入する必要がある。10月1日時点でBackOffice 2000のライセンスを持つユーザーは,2002年4月末までに個別サーバー製品用のSAに移行する必要がある。マイクロソフトによれば,BackOffice Server 4.5のユーザーは,UAを利用するのが最も安価な移行パスだという。

 BackOffice CALからCore CALへの移行は,ユーザーが2002年4月末までにSharePoint Portal ServerのCALを追加購入すれば可能だ。両者に含まれるライセンス内容の差異を埋めるためである。ただし,Core CALに移行した後,SQL ServerのCALを追加購入しなければならないケースも起こる。Core CALのSoftware Assurance(一定期間内の自由アップグレード権)の価格は1万5000円(5ライセンスの一括購入で適用されるOpen License利用時の推定小売価格)である。

 なお,BackOffice Serverの弟分にあたる中小企業向けの「Small Business Server」は今後も販売を継続する。既にWindows .NET Serverを含んだ次期バージョン(コード名Bobcat)も準備中という。

(渡辺 享靖=日経Windows 2000)