大規模なインターネット・システムでは,データベース層やアプリケーション層,Webサーバー層からなる階層型のシステムが一般的になっている。システムを構築するサーバーには,より高い性能や信頼性が求められている。米Compaq Computerはその要求にこたえるべく,サーバー製品群を強化していく。今年後半には,メモリーの冗長化技術を搭載するサーバーや拡張ボード型の高密度サーバーの出荷を予定している。同社のIndustry Standard Server GroupでPCサーバー「ProLiantシリーズ」のビジネスを指揮するBrad Anderson副社長に,今後のサーバー戦略を聞いた。
問 PCサーバーで大規模なインターネット・システムを構築できるのか。
答 Compaqが提供するIntelプロセッサを採用した標準アーキテクチャ・ベースのサーバーは,ここ1年から1年半の間に可用性や拡張性が格段に向上した。Sun Microsystemsのような独自のRISCシステムを提供しているようなベンダーは,標準アーキテクチャでは本当の意味で可用性が高いシステムを構築できないと言っているがそれは誤りだ。これまで性能面の向上が先行していたが,その性能に見合う信頼性が提供できるようになっており,より堅牢なシステムを構築するために導入されている。価格性能比も一段と向上した。ユーザー企業のコスト重視の意向は強く,この傾向は加速していく。
問 そのような環境の中でCompaqはサーバーをどう強化するのか。
答 信頼性や性能を高める様々な新技術を投入して機能強化していく。例えば,アプリケーション層やデータベース層向けには,「Online Spare Memory」や「Hot Plug Mirrored Memory」,「Hot Plug RAID Memory」といったメモリーの冗長化機能や「Advanced Data Guarding」という新しいRAID機能で信頼性を向上させる。フロント層には,ギガビット・イーサネットに対応するなど高速化を図っている。
Online Spare Memoryの機能は,日本でも7月17日に発表したProLiant DL380/ML370に搭載した。メモリー故障時に自動的に予備メモリーに切り替える機能だ。今年中には,さらに信頼性が高いメモリー技術を製品化する。Hot Plug RAID Memoryは,次世代のProLiant 700シリーズで採用する技術だ。この機能を使えば,パリティ情報を使ってメモリー故障時にデータを復旧することができる。ProLiant 500シリーズ向けには,メモリーのミラー構成が可能なHot Plug Mirrored Memory機能を搭載する。RAID MemoryとMirrored Memoryはホットプラグに対応しており,システムを稼働したままでメモリーの交換が可能だ。
Advanced Data Guardingは,2個のパリティ・ドライブを持つRAID技術である。ディスクが2個壊れてもデータの復旧が可能で,従来のRAID1やRAID5などのシステムに比べ,信頼性が高い。最大56個のハードディスクで構成できるので,大容量のシステムに向く。現在,拡張ボードとしてRAIDコントローラを提供しているが,今年後半に投入する次世代のサーバーには,Advanced Data Guardingの機能をオンボードに搭載する予定だ。
問 米TransmetaのCrusoeを搭載する拡張ボード型の高密度サーバーが登場しているが,この分野には参入するのか。
答 「QuickBlade」と呼ぶ高密度サーバーを今年第4四半期に投入する。1Uタイプの薄型ラックマウント・サーバーを大きく上回る省スペース化を実現した製品で,1つのラックに280台のサーバーを搭載できる。ただしこのサーバーには,Intelの低電力プロセッサを搭載する。Crusoeを搭載する製品は,ECCメモリーに対応しない,2プロセッサ構成に対応しないなど制限があり,サーバーの用途に向いているとはいえない。顧客はIntelベースのテクノロジに信頼感があり,ポータブル製品向けに開発されたCrusoeをサーバーに利用するのには抵抗があるだろう。QuickBladeでは,故障したサーバーを交換するときに,インストールされていたソフトウエアを確認して再構成する管理機能も提供する予定だ。
問 CompaqはUnisysからOEMを受けていた32プロセッサ構成のサーバーの提供をやめた。PCサーバーにハイエンド領域のニーズはないのか。
答 32プロセッサ構成の32ビット・サーバーについては,顧客の注目は高かったが販売に結びつかなかった。現在は8プロセッサ製品のニーズの方が高いので,こちら注力することにした。しかし64ビットのシステムでは,当初の計画通りCompaq自身が開発中の32プロセッサ構成の製品をバックエンドの大規模システム向けに提供する。Itaniumの後継プロセッサとなるMcKinleyやMadisonの世代で提供する予定だ。
最初に述べた通り,標準ベースのProLiant製品は可用性や信頼性,拡張性が向上している。Sunなどの独自システムに比べ,3分の1から4分の1の価格で提供できる。CompaqとMicrosoftはフロント層とアプリケーション層で大きな成功を収めてきた。ユーザーはバックエンド向けのシステムでも高いコストを支払うのに嫌気が差しており,Compaqが提供する製品はバックエンド向けにも受け入れられる。Microsoftとの広範なパートナシップの中でもWindows 2000 Datacenter Serverの分野にはフォーカスしており,Sunが幅を利かせる領域に食い込んでいく。