プロセッサ・メーカー米TransmetaのDavid Ditzel最高技術責任者(CTO)が来日し6月12日,記者向けに同社の省電力プロセッサCrusoeの戦略を語った。この中で「Crusoeはサーバー向けの機能を備えたプロセッサだ。今後さらに多くのサーバー・メーカーからCrusoe搭載サーバーが登場するだろう」と,ノートPC以外の分野にも本格的に取り組んでいくことを改めて宣言した。

 すでにCrusoeプロセッサを搭載したサーバーが相次ぎ登場している。今年に入ってカナダRebel.com,米FiberCycle Networksなどが発表し,5月には米RLX Technologiesが発表した。いずれも省電力・省スペース型のインターネット向けサーバーである。

  例えば,RLX Technologiesの発表したサーバー「RLX System 324」は,同社がServerBladeと呼ぶ拡張ボードのような形状をしており,高さ3U(約13cm)のラックに最大24個搭載できる(写真)。プロセッサは,Crusoe TM5600(動作周波数633MHz)を搭載している。マシン全体として省電力化・省スペース化を図り,現在省スペース機として主流の1Uタイプのラックマウント機に比べ,消費電力が5~10分の1,マシンの台数密度が8倍になった。RLXによると,ラック当たりのWebサーバーの処理性能は,米Compaq Computerの汎用PCサーバーProLiant DL320に比べ,約4倍になるという。

 Crusoeはもともと,ノートPCのバッテリ駆動時間を伸ばすことを売り物に登場した。プロセッサの命令セットをソフトウエアで“翻訳”して実行し,ハードウエアのアーキテクチャを単純化することにより消費電力を抑えている。一方で,Crusoeの省電力と低発熱は,増大するサーバー設置スペースや電力消費量に頭を悩ませるISPなどのニーズにも合っている。

 今後Transmetaは,単なる省電力なだけでなく,Crusoeプロセッサを高性能にする予定だ。6月26日にPC Expo(米国ニューヨークで開催)で発表する「同TM5800」は,消費電力を5.5ワットに抑え,動作周波数を800MHzにする。また,2002年に発表する次世代プロセッサは,1クロック当たりに処理する命令セットを現在の2倍に高めて,1GHz超の動作周波数にするという。消費電力は7ワット以下に抑えられる。「この次世代プロセッサには,サーバー向けの機能を盛り込む。高い性能を必要とするあらゆるコンピューティング環境で利用されるようになる」と,Ditzel氏は自信を見せた。

(森重 和春=日経Windows 2000)