米MicrosoftのSteve Ballmer最高経営責任者(CEO)は5月8日,東京で開催中の「Microsoft Windows Embedded Developers Conference 2001」の基調講演で,「これまでの組み込みデバイスはシンプルなものを想像しがちだったが,今後の組み込みデバイスは違う。高機能なソフトウエアを搭載し,デバイス同士がネットワークで連携してやり取りすることが必要になる」と主張。スマート・フォン向けに開発中のソフト「Stinger」や,自動車メーカーと共同で「Car.NET」と呼ぶ車載用デバイスを開発する取り組みなどを例に挙げながら,同社が掲げる.NET戦略を進める上でPC以外のデバイスにも積極的に取り組むことを改めて強調した。

 さらにBallmer氏は,こうしたデバイスを実現するための組み込み用OSとして,Windows CE次期版「Talisker(タリスカー:開発コード)」のベータ1を,国内の一部のOEMメーカーに提供開始したことを明らかにした。Taliskerは,組み込みシステム向けのリアルタイムOS。従来のWindows CE 3.0に比べ,ソフトウエアのコンポーネント化を進めたほか,BluetoothやUniversal Plug and Playに対応するなどの強化を図った。Talisker日本語版の正式出荷は,2001年第4四半期を予定している。

 Taliskerとともに.NET戦略を支える組み込みOSの「Windows XP Embedded」も,Windows XPの出荷後90日以内に提供するという。このOSはNT Embedded 4.0の後継製品に当たる。コンポーネント化されたWindows XPの各機能の中から必要なものを組み合わせて,組み込み機器用のカスタムOSを構築できる。

 組み込み型デバイスは,Microsoftの次世代インターネット戦略「Microsoft.NET」で大きな役割を果たす。.NETは,PCだけでなく,携帯電話やPDAなど,あらゆるデバイスから「Webサービス」と呼ぶアプリケーション・サービスを利用して連携動作できる環境を目指すもの。TaliskerやWindows XP Embeddedには「.NET Framework」と呼ぶソフト開発・実行環境が提供され,.NETに対応するデバイスの開発が可能になる。

(森重 和春=日経Windows 2000)