システムBIOSの大手メーカーである米Phoenix Technologiesは5月8日,PCのリカバリ・ソフト「FirstWare Rescue」を日本国内で発表した(米国発表は4月23日)。また,来日した同社CEO(最高経営責任者)のAlbert E. Sisto氏が,今後のソフトウエア開発計画を語った。

 FirstWare Rescueは,PCのOSが不調に陥ったときに,ハードディスクの“隠し領域”に保存されたリカバリ・データをリストアするためのソフト。ほかにもマシンのシステム状態を検査する機能や,ハードディスク上にコピーされたCD-ROMの中身を仮想的なCD-ROMドライブに見せる機能などを備えている。

 FirstWare Rescueの基盤技術は,IDEハードディスクの一部の領域をシステムBIOSだけが使えるようにしたところにある。これは「PARTIES」(Protected Area Run Time Interface Extension Services)と呼ばれる,ANSIの標準仕様に準拠したものだ。エンドユーザーはハードディスクの隠し領域にはアクセスできず,パスワードで認証されたシステムBIOSだけがアクセスできるように保護されている。PARTIESは隠し領域のデータの使い方や,プログラムの呼び出し方を規定している。

 OSが壊れて正常に起動しなくなったときに,システムBIOSが隠し領域にあるFirstWare Rescueを起動する。すると,同ソフトが同じく隠し領域に保存してある「工場出荷時のハードディスク内のデータ・イメージ」を,エンドユーザーが使える領域にリストアするといったものだ。システム状態をチェックするソフトや仮想CD-ROM機能が利用するCD-ROMデータも,隠し領域の中に保存されている。

 FirstWare Rescueを利用すれば,PCに付属しているリカバリCDやプリインストール・ソフトのCD-ROMが不要になるうえ,復旧にかかる手間や時間を抑えられる。ただし,ハードディスクの本来の記憶容量よりも,少ない容量しか利用できないというデメリットはある。

 来日したCEOのAlbert E. Sisto氏によると,既にハードウエア・ベンダーにFirstWare Rescueの販売を進めており,エンドユーザーが手にするのは「米国では今年秋モデル,日本では今年末モデルになる」という。当初はコンシューマPC向けとして企画されていたが,「ほかにもアプライアンス・サーバーなど,導入の手間を省いて管理コストの低減を狙う製品にも応用できる」とサーバー市場に意欲を見せた。また,今後もPARTIESを利用したソフトウエアや,セキュリティ関連ソフトなどの分野で,「四半期ごとに新製品を出していく予定」と,BIOS以外のソフトウエア製品に積極的に取り組む考えだ。

(木下 篤芳=日経Windows 2000)