米Microsoftが「.NET戦略」を打ち出してから最初のサーバー製品となるSQL Server 2000が出荷された。.NET戦略の中でSQL Serverはどう位置づけられるのか。ライバルの米Oracleにはどう対抗していくのか。MicrosoftのSQL Server Group Product ManagerであるSteve Murchie氏に,SQL Serverの今後の製品戦略について聞いた。

問 .NET戦略に対してSQL Serverは,どのような機能を提供するのか。

 .NETはインターネットを利用したビジネスに貢献するものだ。拡張性,信頼性などはもちろんのこと,新しいインターネット・システムを迅速に開発できる機能をSQL Server 2000は持っている。特にXMLのデータをそのまま格納したり,検索結果をXMLで出力したりできる点は.NET戦略の中で重要な役割を担う。.NETが目指すシステムでは,データはXMLで交換するようになるからだ。

 将来はさらに.NET向けの機能を強化する。1つはインターネット上で提供されるサービスにデータを受け渡すためのプロトコル「SOAP(Simple Object Access Protocol)」への対応だ。現状ではSOAPを使ってデータベースにアクセスするには,データベースとアプリケーションの中間にSOAPを解釈するミドルウエアが必要になる。この部分をSQL Serverに実装して,直接SOAPを解釈できるようにする。

 もう1つは複数の開発言語を利用可能にするCommon Language Runtime(CLR)である。SQL ServerにもCLRを実装し,PerlやCOBOLといったさまざまな開発言語でストアド・プロシージャなどを記述できるようにする。

問 インターネット分野では,米Sun MicrosystemsとOracleの製品を使っているケースが多い。

 確かにSunとOracleは信頼性と拡張性があると言われているようだ。しかし,現在はWindows 2000とSQL Server 2000の組み合わせでも見劣りしないところまできた。数年前とは状況が違うことをユーザーに理解してもらう必要がある。時間はかかるだろうが,マーケティングでもう少し努力しなければならない。

 ユーザーは信頼性・拡張性が十分であると認識できれば,次はいかに早くシステムを構築できるか,という話に関心が移るはずだ。その点では,すでにSQL Server 2000のほうが優れている。

問 トランザクション処理性能を計測するTPC-Cベンチマーク・テストで,SQL Server 2000のクラスタ・システムはランキング・トップの座についた。これに対して,OracleのEllison会長は「MicrosoftがTPC-Cテストで使ったクラスタ・データベースの仕様で,アプリケーションを実行できれば1000万ドルを進呈」といった過激な発言をしている。

 重要なのはTPC-Cテスト以外でも,SQL Server 2000の性能を実証している点だ。たとえば,SAP R/3やPeopleSoftといったERPソフトによるいくつかのベンチマーク・テストでも,SQL Serverがトップだ。

 そもそも,Oracleのクラスタ・システムは1つのハードディスク装置を複数のサーバーで共有する「シェアド・ディスク型」のアーキテクチャを採用している。これではサーバーを追加していっても,いずれパフォーマンスは頭打ちになるだろう。

 一方,SQL Server 2000はディスク装置を共有しない「シェアド・ナッシング型」のアプローチをとっている。1つのテーブルを複数のサーバーに分割して,並列に検索・更新する方式である。すべてのアプリケーションに向いたアーキテクチャとは言わないが,おおむねサーバーを追加すれば,それだけパフォーマンスが向上する。

 将来のSQL Serverは,新しいシェアド・ナッシング型に進化させる。クラスタ・システムのすべてのサーバーに,データベース全体の完全なコピーを置く方式だ。Oracleはシェアド・ディスク型を堅持する限り,SQL Serverには追いつけないだろう。

(目次 康男=日経Windows 2000)