米Microsoftは,開発コード「Whistler」で知られるWindows 2000の次期バージョンの暫定ビルドを評価のためテスター向けにリリースした。ベータ1の提供が2週間遅れて,10月下旬にずれこんだための措置。ビルド番号は2267で今週火曜日にリリースされている。以前に配布されたアルファ版からわずかな改善はあるが,新機能はほとんどない。

 海賊版防止のため,テスターには新しいポリシーが適用されている。Microsoft Passportという仕組みを使って,Webからダウンロードしたり,インストールしたりするようにした。このビルドのProfessional版とPersonal版を数時間使ったところ,Microsoftはベータ1を遅らせて賢明だと思った。ベータ1では,新しい交換可能なユーザー・インターフェースが提供されるはずだが,現段階では数カ月先になると思われる。

 全般的に操作は簡単になっている。Windows 2000のインストールでは,ウィザードでオプションを開き忘れると,前バージョンのWindowsを簡単に消去してしまう。しかし,Whistlerではセットアップの最初の方で「Installation Type」というオプションを設けた。「Express Upgrade」を選べば,現在のWindowsの設定を維持したままアップグレードする。一方,「Custom Install」を選ぶと,デュアル・ブート用などにインストール・ディレクトリや,言語オプション,ファイル・システムなどを変えられるようになる。

 ちょっとした改良もある。Windows 2000では,システムが起動不能になってもインストール用のCDからブートして,リカバリ用の機能を起動できる。しかし,この機能は,OSのインストールに使うファイルのコピーが終わるまで利用できない。WhistlerのCDブートでは,ファイル・コピーの段階に入る前に「F5」を押すことですぐ自動システム・リカバリ(ASR)機能をスタートできるようになる。

 Whistlerビルド2267のビジュアル面は,以前に提供されたプレビュー版やアルファ版と似ている。ただし,2267ではようやくWindows 2000と同じくらいにはディスプレイのプロパティから見た目を変えられるようになった。また,Personal版,Professional版の両方が「スタート・パネル」という新しいインターフェースで,スタート・メニューを置き換えている。「スタート・パネル」を使うと,最近使ったアプリケーションやマイドキュメント,マイコンピュータ,コントロール・パネル,ヘルプとサポートなどのシステム・ツールにすばやくアクセスできる。カスタマイズも可能だ。

 「ヘルプとサポート」はWindows Millennium Edition(Windows Me)のヘルプ・システムが基になっている。ユーザー・インターフェース変更の作業はまだ途中だ。基本レイアウトはWindows Meのままだが,見た目は新しくなっており,「Whistler Support Services」や「Recent News Headlines」といったサポート機能が盛り込まれている。ベータ2では,「Windows Update」との統合などが行われる見込み。主要なところではネットワーク上の複数のWhistlerマシンを1台のコンピュータを使って最新に保つ機能がある。家庭ユーザーと企業ユーザーの両方がこの機能を利用できるようにするようだ。

 Whistlerビルド2267では,「Compatibility Center」というものも導入している。これはハードウエアの互換性を調べる機能である。「Compatibility Center」では互換性のある製品を購入前に調べたり,既存の製品の互換性問題に関するトラブルシューティングができるようにする。Microsoftは「Compatibility Center」をハードウエア・メーカーに開放して,ユーザーが1箇所で必要な情報を集められるようにするのが狙い。

 結局のところ,Whistlerビルド2267には大幅な変更はない。アーキテクチャなどの本質部分の変更はなく,ビジュアル面の改善が目立つ。とはいえ,Whistlerがスピードの速いハードウエアを要求することは明らかなようだ。テスト用に用意したスピードの速いマシンでも,新しいインターフェースは地をはうように遅かった。このリリースでは「最小のRAMが128Mバイト」というスペックを要求されても驚きはしない。Microsoftは,他のWindows同様にWhistlerでもハードウエアの要求水準をあげがちである。

〔本ニュース記事は,日経Windows 2000が提携している米国のWindows NT/2000専門誌「Windows 2000 Magazine」のニュースを翻訳,編集したものです〕
(干場 一彦=日経Windows2000)