CORBA準拠のミドルウエア製品Orbixの開発元であるアイルランドのIONA Technologiesは12月8日,同社の日本法人として日本アイオナテクノロジーズを設立したことを正式に発表した。7月1日に登記を終えていたが,「要員の確保を含むインフラを整備してからと考えていたので,この時期になった」(同社のMichael Verretto代表取締役)という。

 OrbixをはじめとするIONA製品は,これまで東洋情報システム(TIS)NECが販売してきた。約350社への販売実績があるという。しかし,日本における売上はIONAの総売上の5%程度にとどまっている。「これまでIONAは欧米でのビジネスに比重を置いており,アジア/太平洋地区をあまり重視していなかった」(Verretto氏)ことも一因だった。

 しかし,IONAが99年第1四半期に初の赤字を計上したことで「もっと本腰を入れてアジア/太平洋地域でのビジネスをやらなければいけないと危機意識を持つようになった」(同)。加えて,(1)日本はアジアにおける最も重要な市場である,(2)同社は2000年以降,COBRA製品の単体売りよりもWebサーバー・ビジネスに主軸を置く予定で,そのためにはトータル・ソリューションを提供していく体制が不可欠,(3)顧客やパートナに安心感を与えるためには日本に拠点を置くことが必要,などの理由により,日本法人の設立を決めたという。

 日本アイオナは同時に,今後の主力製品としていく予定のWebサーバー・ソフト群iPortal Suiteを発表した。iPortal Suiteは,メインフレームをはじめとする既存のサーバー資産を活用するためのインテグレーション・サーバーとWebアプリケーション・サーバーを統合し,一つの窓口(ポータル・サーバー)から利用できるようにするソフト。(1)バックボーンとなるミドルウエアのOrbix 2000,(2)ポータル・サーバーのiPortal Server,(3)アプリケーション・サーバーのiPortal Application Server,(4)インテグレーション・サーバーのiPortal Integration Serverで構成される。

 まず2000年2月に(1)と(3)を出荷する。(1)は,現行CORBA製品のOrbix 3.1の次期版にあたる製品。CORBA 2.3に準拠しているほか,2000年前半に仕様が確定する予定のCORBA 3.0の機能も一部盛り込んでいる。Windows NTとLinux,Solaris,HP-UXなどの主要UNIXに対応する。(3)はJava2 Enterprise Edition(J2EE)準拠のアプリケーション・サーバー。GUI開発環境も提供するほか,VisualCafeなどの開発ツールと統合利用できる。Windows NTとSolarisで動作する。

 続いて2000年第2四半期に(4)を出荷する。メインフレーム(CICS,IMS,MQSeriesなど)や他のPC環境(COM+),ERP(SAP R/3など)と接続するためのアダプタという機能を用意し,これを利用して既存のシステム資産を活用できるようにする。アダプタは着脱可能で,特定のシステム向けにアダプタを作ることもできる。そして2000年第3四半期に(2)を出荷する。ほとんどプログラミングせずに(3)や(4)を利用するポータル・サーバーを実現できるという。このほか,Orbixに分散トランザクション・サービスなどを統合したOrbix OTMの新版や,Javaに対応したOrbix Webの新版なども順次出荷していく予定だ。

 日本アイオナはこれらの製品の一部を直販するとともに,コンサルティングや教育,サポートなどを提供する。TISやNECは引き続き同社の代理店として活動していく。加えて,新製品を使ったソリューションを提供する新パートナも募っていく考えだ。2000年の売上目標は8億~9億円。社員数は2000年3月までに15人にする計画だ。