――次期開発ツールVisual Studio（VS）2005の大きな特徴は何か？
時間があればすべての新機能について話したいが，ここではハイライトだけお話しする。VS新版の開発にあたっては開発者の生産性を向上するというのが重要なテーマであり，VS 2005でもそれは変わらない。例えば，C#のジェネリック，VBのエディット・コンティニュやMyクラスなどが開発生産性を改善する新機能だ。また，ASP .NET 2.0では，コードを書くことなく，ログイン・ページなどを構築できるサーバー・コントロールが提供される。同じシナリオのアプリケーションを開発する場合，従来版と比べてコード量を50～75％ぐらい減らすことができる。
アプリケーション配布/更新の問題もClickOnceによって改善した。モバイル機器向けの開発機能も統合されている。加えて，VS 2005 Team Systemでは，開発のライフサイクル全体をカバーする機能が盛り込まれる。モデリング，パフォーマンス・プロファイラ，単体テスト/負荷テスト，プロジェクト管理などの新機能は，システム・デザイナ，デベロッパ，テスター，プロダクト・マネージャなどで構成されるチームの協同開発作業を支援する。もう一つ，ExcelやWordなどのOfficeアプリケーションを使ったクライアント開発を容易にするVS Tools for Office（VSTO）2.0も実装される。VSTO 2.0では，特にOutlookのカスタマイズ機能が目新しい。こうした新機能を盛り込んだVS 2005の出来に，我々は非常に自信を持っている。
――VSのカバー範囲が広がったということか？
一口に開発者といってものいろいろな種類や立場の人がいる。企業システムの開発に携わる人，学校でソフトウエア開発を学んでいる人，私の妻のように本業は会計士だけれど自分にとって便利なアプリケーションを作りたいと考えている人など，スキルや経験の異なる様々な開発者がいるということを認識することが大事だ。そこで，開発者をセグメント化し，それに合わせた製品を提供しようと考えた。例えば，初心者や入門者向けに，より簡単に学べる，簡単にスタートできる，簡単に理解できることを意識して，特に力を注いだのがVS 2005のExpress Editionだ。
――確かに我々はExpress Editionには大きな関心を寄せている。米国では40数ドルで販売するそうだが，思い切ってフリーにするという手はないか？
基本的に我々は，ソフトウエアには価値があり，相応の価格があるべきだと考えている。ただし，プログラミングに関心がある多くの人々，特にこれからの世代の人たちを含めて，より広範囲に開発ツールを提供するにはどうしたらよいかを真剣に考えている。Express Editionについては，マーケティングの方法や価格に関して，ユーザーに喜んでもらえるような発表をこの1，2カ月の間にできるだろう。
（マイクロソフト デベロッパーマーケティング本部の北川裕康部長から）現在，マーケティング部でExpress Editionの提供方法について検討しており，単体の製品以外に，いろいろなものにバンドルするといったことも考えています。詳細については，Somasegarが申した通り，1，2カ月の間に発表します。
――Express Editionを利用する初級者/入門者は，C#とVisual Basicのどちらを使うべきだと思うか？
その質問は，私の二人の娘のうちのどっちが好きなの？ と聞かれるくらい難しい。プログラミング言語の選択は人によって異なるものだ。だからこそ，我々はVSで複数の言語を使えるようにした。VBを少しでも知っているのならVB .NETを使うのがいいだろうし，言語に関してまったく偏見がないのならC#やC++を選ぶのでもいいだろう。あくまでも個人の問題だ。
ただし，VB 6.0からVB .NETに移行した際に，VBの特徴であった平易さ（Simplicity）の一部がなくなってしまったという反省はある。そこで，VBユーザーからの強い要望に応えて，VB 2005にエディット・コンティニュ機能を復活させたり，Myクラスを導入して .NET Frameworkのネームスペースをより簡単に利用できるようにした。旧版のVBユーザーがより移行しやすくなったと思う。
――ところで，あなた自身は最近プログラミングをしているか？
イエス。それほどたいしたものではないが，VSTOを使ってOutlookをカスタマイズするアプリケーションを作っている。具体的には，My Contactとカレンダを連携して，大切な人の誕生日には自動的にグリーティング・カードを送信するといった機能を追加する。ただ，開発には着手したが，まだ完了していない(笑)。
――言語は何を使っているのか。
VB .NETだ。だが，次のアプリケーションはC#で書くかもしれない(笑)。
（日経ソフトウエア）
