「Mac OS Xは1台でUNIXもOfficeもJavaも動くユニークな環境だ。今では開発者会議の半数が企業内の開発者になっている」――国内開発者とのミーティングで来日した米Apple Computerのワールドワイド・デベロッパ・リレーションズ担当副社長Ron Okamoto氏(写真)に話を聞いた。発言の要旨は以下の通り。

――Appleのビジネスの現状はどうか  Appleは今,成長期に入っている。携帯音楽プレーヤの「iPod」や音楽ソフトのオンライン販売サービス「iTunes Music Store」がAppleのビジネスに大きく寄与している。また,小売店「Apple Store」の展開も続けている。東京と大阪にあるような大型の店舗に加え,小規模店舗の展開も始めたところだ。しかし,Appleの中心にあるのはMac OS X(以下,OS X)によるコンピュータ・ビジネスだ。Mac OS 9からの移行ユーザーはもちろんのこと,OS Xによって新しくMacを使い始めるようになったユーザーも多い。

――新規ユーザーはOS Xのどこに魅力を感じるのか  今日の開発者は,ホビー・プログラマからプロフェッショナルまで,マルチプラットフォームを意識せざるを得ない。Javaもあれば,PHPやPerlをはじめとするオープンソースの環境もある。UNIXのスキルを持った人もいるだろう。OS Xはそれらすべてにこたえたうえで,「Carbon」や「Cocoa」といったMac OSならではのフレームワークも用意している。1台でUNIXのコマンド・シェルがすぐに使えて,なおかつ,OfficeやPhotoshopも動くし,Java開発もできる,といったユニークな環境がITのプロフェッショナルから学生にまで高く評価されている。

――企業情報システムへの導入は目に見える形で現れているか  サーバー・システムの「Xserve G5」「Xserve RAID」が好調だ。Appleは毎年サンフランシスコで1週間にわたって開発者会議を催している。現在ではその出席者の半数が企業内でのシステム開発に携わる人たちだ。これはOS Xによって新しいユーザー層が加わったせいだと見ている。彼らも以前はMacintoshなど見向きもしなかった人かもしれないが,OS Xのユニークさを評価してもらえたのだろう。実際,企業への導入は口コミによって広まることも多いようだ。

――彼らが従来のUNIXシステムでなくOS Xを導入する理由は  繰り返しになるが,いろいろな言語やいろいろな作法から最適な組み合わせを選べることだ。一例を挙げるならグラフィックスだ。ソフトウエア開発でこれから活躍する世代の人は,PlayStationに代表されるようなデジタル・メディアとともに育った。彼らが高いグラフィックス処理能力をコンピュータに要求するのはごく自然なことだ。企業内のアプリケーションでもグラフィックスを重視する傾向は強まっている。アプリケーションのインストーラにまでグラフィックスが使われる時代だ。

――OS Xを見たことも触ったこともないプログラマにメッセージを  まずはOS Xに触れて,その姿を知ってほしい。OS Xは,UNIXであり,オープン・スタンダードに準拠し,Javaも完全に動き,リッチなグラフィックス能力も備える。しかもそれらすべてを一つにまとめた使いやすい形で提供している。OS Xが無理なら,Appleが無償配布している音楽ソフト管理ツール「iTunes」のWindows版を試してほしい。このソフトはWindowsでMacの使い勝手の一端に触れられる。そしてコンピューティング環境の将来を考えてもらえれば,OS Xがそれに対応していくためのスキルや経験を身に着けられる最適な選択肢だということを理解してもらえるだろう。

(日経ソフトウエア)