2003年12月9日と10日に東京都内で開催された開発者向け会議Microsoft .NET Developers Conference 2003に合わせて,米Microsoftの .NET Developer PlatformチームのDavid Treadwellジェネラル・マネージャ(写真)が来日,記者との会見に応じた。会見の要旨は以下の通り。

――次期版Visual Studio(VS).NET(開発コードWhidbey)の新機能は何か。
 主な新機能は,Visual Basic(VB).NETに関するものだ。VSに再びEdit/Continue機能(デバッガを起動したままコードの修正/テストができる機能。VB 6.0に搭載されているが現行のVB .NETでは無くなった)を採用した。また,VB .NETには“My.”クラスを追加した。これは,ファイル・アクセスや印刷といった頻繁に行う処理を実装する際に,より簡単に,より少ないコード量で記述できるようにするものだ。そのほか,日本のユーザーから特に要望の多かったコード・リファクタリング機能をVisual C#に搭載した。C#には,既存のコードを効率的に再利用するジェネリックや,煩雑な繰り返し処理を容易にするイテレータなども追加した。コンパイラを含むツール全体が64ビットWindowsをサポートしたことも新機能の一つだ。

──その中で特に目玉を一つあげるとすれば。
 Edit/Continue機能だろう。VB 6.0以前のたくさんのユーザーから .NETでぜひ実現してほしいという要望があった。使い勝手の良さという点では大きな改善だと言える。

──コード・リファクタリング機能についてもう少し教えてほしい。
 既存のコードに対してできるだけ簡単に変更できるようする,そして変更を加える場合にはソースコード全体にわたる手作業をできるだけ少なくすることが目的だ。Whidbeyでは,開発のいろいろな側面が“Simple”になる。リファクタリングやデバッグ機能もその一つだ。

──当初予想していたほどに 開発者が .NETへ移行していないように思う。
 我々は,.NETであらゆる種類のソフトウエア開発のための幅広い新しいプラットフォームを実現しようとしている。何百万人という世界の開発者を .NETに移行させるには,相当時間がかかると認識している。しかし,我々の調査では,米国ではJavaを使っている開発者よりも .NETを使っている開発者の方が多い。特に,Webアプリケーションの開発では,ASP .NETへの動きが強まっている。Longhorn(Windows XPの後継となる次期Windowsの開発コード)では,さらにマネージ・コードが占める割合が大きくなる。今後は,.NETへの移行が加速するだろう。Microsoftは,.NETやその関連技術の研究開発にばく大な費用を投資しており,.NETが優れたプラットフォームであることに大きな自信を持っている。

── .NET Frameworkの実行環境(ランタイム)が普及していないのが問題ではないか。
 確かに,そうした疑問を持つユーザーは多い。しかし,実際には,現在までに8000万人のユーザーが .NET Frameworkをインストールしている。そのうちの4500万人はWindows Updateでインストールしている。また,コンピュータ・ベンダーの協力を得て,現在,多くのWindowsパソコンに .NET Frameworkがプリインストールされている。さらに,Windows XPのTablet PCやMedia Centerといったエディション,Windows Server 2003などには標準でインストールされている。このようにいろいろな方法で .NET Frameworkの普及を図っている。もちろんLonghornでは,クライアントを含むすべてのバージョンで .NET Frameworkがインストールされる。

──VS .NETは高価だ。.NET入門者を増やすために,VB .NETのスタンダード版を無償で提供するといった思い切った方策は考えられないか。
 Whidbeyでは,既存のVBユーザーやプログラミング入門者が移行しやすい,また入手しやすい方策を実施する予定だ。まだ詳細は言えないが,期待していただきたい。

──最近は,Eclipseの人気などでJavaに移行する開発者が多いようだが。
 我々の対抗策は,Whidbeyでの革新だ。より容易にツールや .NET Frameworkを利用しやすくなる。それはJavaを使うユーザーにも,魅力的に感じてもらえる自信がある。先ほど言ったように,Whidbeyを入手しやすくする策も考えている。2004年の春または夏にWhidbeyのベータ版を配布する予定だが,その頃には具体的な策を語れるようになるだろう。

──WebアプリケーションのGUIを改善するJSF(JavaServer Faces)などが登場すると,ASP .NETの魅力も薄れるのでは。
 JSFの発表は,ASP .NETのWebフォームで実現した機能がいかに魅力的であったかを示す証拠だ。我々は今後もASP .NETでJavaの一歩先を行くつもりだ。Whidbeyで搭載予定のマスターページやデータ・ドリブン・ページのキャッシュ機能などがそうであり,これらはユーザーが本当に必要としている機能を実現したものだ。

──ASP .NETを容易に体験できるフリーの開発ツールWeb Matrixは,今後どうするつもりか。
 Web Matrixは,Microsoftの正式なプロダクトではないが,これを支持するユーザーは多い。Web Matrixは,より廉価な開発ツールの方向性を示すものと言える。我々が将来目指すものの一つのヒントと考えて良いだろう。

──ところで日本語版 .NET Framework SDKのインストールはとても面倒だ。改善できないか。
それはSDKのチームに調べさせよう。

(日経ソフトウエア)