米Microsoftは,現在米国ロサンゼルスで開催しているProfessional Developers Conference 2003(PDC)で,Windows XPの後継となるLonghorn(開発コード名)および,開発ツールVisual Studio .NETやSQL Serverの次のバージョンの内容を明らかにした。
LonghornにはこれまでのWindowsとはまったく異なるプログラミング・モデルを採用する。その柱となるのが,Avalon(開発コード名)である。
Avalonは,Windowsの新しいGUIライブラリである。Avalon対応アプリケーションは,デスクトップ(クライアント)アプリケーションながら,現在のASP .NETに基づくWebアプリケーションのようになる。すなわち,ユーザー・インタフェースをXAMLと呼ぶ専用のXMLで記述し,それにロジックを関連付ける。その際,ロジックは,同一ファイル内に格納されている必要はなく,Webサービスなどで呼び出してもよい。まさに,HTMLでユーザー・インタフェースを記述しその背後にあるロジックを呼び出すWebアプリケーションと同じだ。
さらにLonghornにはIndigo(Webサービス関連)とWinFS(ファイル・システム関連)と呼ぶ新機能が導入される。Avalonを含めたこれら三つをまとめて,WinFXと呼ぶ。WinFXがLonghornの新しい「ネイティブ」APIになる。現在のWin32 APIも互換性のために用意されるが,Longhornの新しい機能を利用するには,基本的にWinFXを使う必要がある。WinFXは,現在の .NET Frameworkの延長線上にある。現在の .NET Frameworkに用意されているクラスはWinFXにも用意され,WinFX対応プログラムの実行の仕組みは .NETと基本的に同じである。
.NET Frameworkは,SQL Serverの次のバージョン(開発コード名「Yukon」)が出荷されるタイミングでメジャー・バージョンアップする。これは2004年末と見られる。Yukonは,.NET Framework上で動作するようになる。ストアド・プロシジャで .NET Frameworkのクラスライブラリを利用でき,現在のT-SQLに加え,C#などの .NET対応言語で記述できるようになる。Yukonが動作する .NET Frameworkはバージョン2.0で,現在の .NET Framework 1.1に用意されていないマルチメディア関係のクラスなどが追加される。WinFSは,このYukonのエンジンを利用する。つまりLonghornでは,ファイル・システムに,データベース・エンジンを使うということを意味する。
Yukonと同時に開発ツールのVisual Studio .NETもバージョンアップする。開発コード名Whidbeyと呼ばれるこのバージョンでは,統合開発環境の操作性が向上されている。例えばASP .NET対応Webアプリケーションを開発するのに,現在はInternet Information Services(IIS)が必要だが,Whidbeyは専用のWebサーバーを内蔵しておりIISがなくても開発/デバッグができる。この内蔵Webサーバーは,外部からの攻撃を考慮して,利用するポート番号をその都度変更するようにした。
各言語仕様も拡張される。例えば,C#言語には新たにGenericsが追加される。これは,C++言語のテンプレートに相当する機能である。また,現在のC#プログラムでは,一つのクラスを一つのファイルにまとめて記述する必要があるが,新しいC#では一つのクラスを複数のファイルに分けて記述できるようになる。
Visual Basic .NET言語では,C++やC#言語はすでに備えている演算子オーバーロードが実装される。さらに,キーボード,プリンタ,ディスク・ドライブなどのパソコンのリソースにアクセスするためのMy名前空間内のクラスが用意される。.NET対応になってVisual Basic言語はほかの言語との違いがわかりにくくなったが,今後はより簡単にプログラミングできる方向に向かい,C#などのほかの言語との差異を大きくする。
C++言語は,より .NETへの対応度を増す。現在のVisual C++ .NETで .NET対応プログラムを開発するには,Managed C++と呼ぶ独自拡張した言語仕様を利用する必要があった。新しいVisual C++ .NETでは,今以上に標準C++の仕様に近い形で .NETプログラムの開発が可能になる。
なお,マイクロソフトは2003年11月1日から,オペレーティング・システム・サブスクリプション以上のMSDN会員に対してWhidbeyとLonghornの早期評価版(英語版)を提供する。これらは,PDCで配布されたものと同じものである。ただし,通常のCD-ROMやDVD-ROMによる提供とは異なり,先着3000名の限定である。これらの提供を受けるには,電子メールで申し込む必要がある(詳細はMSDNのサイトを参照)。なお,メディアはDVD-ROMのみである。
米Microsoft,次世代OSと開発ツールの姿を明らかに
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