米SybaseのPowerBuilder EvangelistであるDavid E. Fish氏が米Sybaseの第四世代言語(4GL)による業務システム開発ツールPowerBuilderのバージョン9の発表会にあわせて来日した。同氏に,PowerBuilder バージョン9の新機能,PowerBuilderを含む4GL開発ツールの現在と将来の展望,今後の開発予定などを聞いた。

――PowerBuilder バージョン9の目玉機能の一つ「JSP RAD」の概要について教えて欲しい。
 JavaによるWebアプリケーションの画面を開発するPowerBuilderの機能だ。PowerBuilderはコードを記述せずに,データベースにアクセスする画面を開発できるデータ・ウィンドウ技術を備えている。これらは従来クライアント/サーバー型の業務システム開発で用いられてきたが,これをJSP(JavaServer Pages)に適用できるようにした。PowerBuilderのデータ・ウィンドウを作るのと同じ感覚で,JSPによるWebアプリケーションの画面を開発できる。JavaのコードやHTMLを記述する必要がないため,開発者は画面の開発生産性を向上できる。

――すでにPowerBuilder バージョン9のJSP RAD機能を利用して開発生産性を上げた事例はあるか。
 北米のクレジット・カード会社の事例がある。作成したのはWebから「いくら使ったのか」を照会するシステム。二人のPowerBuilderのエンジニア,三人のJavaのエンジニアを中心とした10人に満たないチームで,開発期間は12カ月。4GLでないほかの言語で開発した場合にくらべて,トータルで約3倍,開発生産性が向上した。

――PowerBuilder,Progressなど業務向け4GL開発ツールは一時,世界的なブームとともに市場に受け入れられたが,現在は衰退しているように見える。4GLの現状と将来をどのように認識しているか。
 私が描くサクセス・ストーリーは以下のようなものだ。たしかにJavaは優れた言語,優れた製品だ。CやC++によるコンピュータのすべてを制御できるプログラミングにも魅力がある。しかしこれらの3GLにくらべて4GLは今も昔も,ビジネスの問題をITで素早く解決するという点において優れている。かつてクライアント/サーバー型の業務システム開発でC++でのプログラミングが流行し,PowerBuilderのユーザーは一度そちらに流れた。しかし,4GLの生産性を知っていたプログラマは,4GLの世界へ戻ってきた。現在WebシステムをJavaで構築するのが流行しているが,彼らも再び4GLの世界に戻ってくるだろうと期待している。

――PowerBuilderが将来備える予定がある機能について教えて欲しい。
 主に三つある。一つ目はC/S,Webに加えて,携帯電話,PDA(携帯情報端末)など多様なクライアントをサポートできるようにすること。二つ目は多様な実行環境への対応させること。例えば .NETでは,現在のバージョン9ではWebサービスをサポートし,独自のインタフェースを介して .NETのコンポーネントを呼び出せるだけだが,将来的にはデータ・ウィンドウの .NET版や,PowerBuilderの独自言語PowerScriptから直接MSIL(Microsoft .NET Frameworkが直接実行できる中間言語)を生成できるようにしたい。EJB(Enterprise JavaBeans)やJ2EE(Java 2 Platform,Enterprise Edition)についても同様だ。これら二つにより,特定の言語,実行環境,クライアントに縛られずにPowerBuilderによるシステム開発が継続できる環境を作りたい。三つ目はUML(Unified Modeling Language)によるモデリングとの統合だ。業務分析の結果UMLとしてモデリングしたデータとPowerBuilderの開発環境を統合できるようにしたい。これらは,2005年までの開発計画にすでに組み込まれている。PowerBuilderの次のバージョン10やその次のバージョン11に実装できるだろう。

(日経ソフトウエア)