ボーランドは11月18~19日,東京で開発者会議「Borland Conference」を開催した。18日午前中の基調講演では,米Borland SoftwareのDavid Intersimone副社長(デベロッパ・リレーションズ担当)が登壇し,スクリーン上のDavid L. Fuller社長兼CEO(最高経営責任者)と掛け合いで講演を行った(写真)。基調講演の後,Intersimone副社長が本誌記者との会見に応じた。

──最近のBorlandは限られた大企業ユーザーの声ばかり聞いているのではないか。製品のバージョンアップが頻繁過ぎてユーザーはそのコスト負担に苦しんでいる。追加される機能にもインパクトがない。Borlandの前身であるInpriseのように,誤った道に迷い込んだように思えてならない。

 そんなことはない。前CEOのDelbert Yocam氏(1996年12月から1999年3月まで同社のCEOを勤め,1998年4月に社名をBorland InternationalからInpriseに変更した)なら「個人開発者だって? 私はあなたがたのことは気にしない」と言ったかもしれないが,Fullerは決してそうは思わない。彼はBorlandのルーツを知っている。確かに我々は大企業ユーザーと会って意見を聞く。でも,ユーザーグループの会合に出かけていってハッカーに会うし,大学に行って学生にも会う。インターネット上にフィードバック・システムを持ち,だれをも同じように大事に扱っている。

──JBuilderは年に2回バージョンアップする。バージョンアップ料金が負担だ。

 Javaプラットフォームが頻繁にバージョンアップすることが一因だ。J2SE,J2EE,J2MEが,それぞれがばらばらにバージョンが上がっていく。顧客はゲームに先んじたいので,新プラットフォームへの対応要求が強い。それに応じるにはJBuilderもバージョンアップせざるを得ない。すべてのバージョンに付いていくのが大変だというのは理解できる。私としては「バージョンを選択してくれ」と言うしかないだろう。各バージョンの機能を見て,必要なものを判断して欲しい。我々は,開発者にJBuilderの全バージョン購入を強制(force)しているわけではない。

──米TogetherSoftを買収するのはなぜか(関連記事はこちら)。

 Borlandの製品は一言で言えば,コード・セントリック(code centric)だ。Delphi,Kylix,C++Builderのコンパイラは我らの力の源であり,その周囲に,コードを作るための機能を発展させてきた。しかし,顧客はより多くの能力を開発ツールに求めるようになった。TogetherSoftの製品はデザイン・セントリック,モデル・セントリックで,我々にない性質を持っている。TogetherSoftのControlCenterはどんな言語でも使える開発環境で,この点もユニークだ。

──ControlCenterはJBuilderとは別の製品ラインとして存続するのか。

 まだ買収のプロセスが完了したわけではないので確実なことは言えないが,ControlCenterは独立した製品として存続するだろう。ただ,それ以上のもの,コンビネーション的な製品が出てくるかもしれない。

──ソフト会社の買収を続けているが,どういう意味があるのか。

 今年のはじめくらいから「カバー範囲の拡大(extend our reach)」と言ってきた。先ほど言ったように,我々はコードを書く人々のための製品を作ってきた。しかし,ソフト開発のプロセス全体をより簡単な,よりスピーディなものにするには,もっと多くの人が調和した(orchestrated)状況が必要だろう。開発プロジェクトの中にはリクエスト・ドリブンな人もいるし,デザイン・ドリブンな人,テスト・ドリブンな人もいる。そうした人も仲間に巻き込んで,統合度合いの強いソフト開発プロセスを作りたいのだ。みんなが一つの共有レポジトリを持てば,ソフト開発はよりスムーズなものになる。我々は今年いくつかの会社を買収したが,目的に合致した会社に投資しているし,その会社を100%コントロールできるような形で投資をしている。正しい方向にあると思う。

──C#はどうなっている?

 .NETの上で動く統合開発環境(IDE),「Galileo(コード名)」を開発していることは話したね(関連記事はこちら)。Galileoでは,Delphi言語も,C++も,C#も,COBOLやPythonも使えるようになる。C#が使えることになるのは間違いない。我々の製品は,Javaと .NET環境を統合するものになる。Webサービスを相互に利用できるなんてレベルではない。.NETのプログラムでEJB(Enterprise JavaBeans)を直接利用することも可能になる。我々の仕事は,.NETとJava,WindowsとLinux,それらの間をつなぐことなんだ。

──DelphiのPersonalは,米MicrosoftのVisual Basic .NET StandardやVisual C# .NET Standardに比べて,機能と価格の面で競争力がない。入門者に薦める気になれない。

 それはMicrosoftのワナ(trap)なんだ。そこにはまっちゃいけない。Microsoftは開発ツールでかせがなくても,Windows,Officeで金をかせぐことができる。Xboxで大きな損を出したって気にすることもない。価格でMicrosoftと競合するのは無理だということをわかってほしい。我々の製品は,オープンネスとチョイスを提供する。それをわかってくれる人もたくさんいる。

──シャープのLinux搭載PDA「ザウルス」は面白いと思わない? ザウルス用のKylixは考えられないかな?

 ザウルスはLinux+Javaのプラットホームとして注目している。でも,Kylixは考えたことがなかったな。考えてみるよ。

──2003年はどんな年になるだろう?

 Turbo Pascalの20周年だよ! 20年もの間,ずっとこのビジネスを続けてきた会社がほかにあるかい?

──Microsoftがある(笑)。

 まあね。2003年も,ソフトウエアをより速く作りたいという要求は変わらないだろう。.NETは離陸し始めると思う。もちろんJ2EE,サーブレット,JSP(JavaServer Pages)の開発ニーズも強い。第3世代携帯電話も出てくる。そんなところかな。

──読者に言いたいことがあればどうぞ。

 ハックして楽しんで,わかったことを教えてくれ(Keep hacking, keep having fun, keep telling us what you think)。みんなの努力を,ビジネスを,とてもありがたく思っているよ。

(日経ソフトウエア)