
「来年投入のGalileoは最強の.NET開発環境だ」──米Borlandの上級マネジャが語る
米Borland SoftwareのJohn F. Kasterデベロッパ・リレーションズ・シニア・マネジャ(写真)が来日し,DelphiやKylixの将来について記者の質問に答えた。インタビューの要旨は以下の通り。
──Delphi 7の.NET対応機能は不十分ではないか。
Delphi 7と共に9月に出荷する .NET対応機能はプレリリース・プレビュー版だ。最初の一歩というべきもので,コマンドライン・コンパイラ,ランタイム・ライブラリ,サンプルとドキュメント程度しか含まれていない。しかし,2003年上期に製品化を予定しているDelphi 8に期待して欲しい。Delphi 8は.NETベースの新しい統合開発環境(IDE)「Galileo」を搭載し,従来からあるVCL(Visual Component Library)およびCLX(Component Library for Cross-Platform)を使ったWin32アプリケーションだけでなく,Windows Forms,Web Formsを使った .NETアプリケーションのビジュアル開発が可能になる。.NETベースのXML Webサービス(ASMXファイルの作成など),Windows CEの .NET Compact Frameworkにも完全対応する。ほかの .NETの開発言語とオブジェクトを相互に利用することもできる。VCLを .NET上に移植したVCL for .NETを提供するので,コードを書き直すことなくDelphiとC++ BuilderのVCLプロジェクトを .NETプロジェクトにすることも可能だ。
──それらの機能はDelphi 7の開発者には提供されないのか。
できあがったものをWebサイトでダウンロードできるようにするなど,より良い .NET対応機能を提供する可能性はある。ただ,いつ何を提供するかを約束することはできない。
──Delphi 7の発表と同時に次版の話をするのは奇妙な気がするが。
私は1980年代にTurbo Pascalがらみの仕事をした後で当社を辞めて独立し,1997年に戻ってきた。それ以来,Borlandの開発者向け情報提供の態度(attitude)を少しずつ変えようと努力してきた。最も高い能力を持つ開発者たち,先端を走っていて,新技術を最初に取り入れる人たちは,自分が世の中の流れに置いていかれるのを嫌う。今後どうなるのか,考えだけでも聞かせて欲しいというニーズがある。私たちは将来の製品について保証を与えることはできないし,実行可能かどうかわからないことを吹聴するわけにもいかないので線引きが難しいのだが,できれば18カ月〜24カ月程度のロードマップを示したいと考えている。情報を共有することで議論ができるようにし,開発者たちと信頼しあえる良い関係を築きたい。
──ここ数年,バージョンアップの頻度が上がってきた。米MicrosoftのVisual Studio(VS)と比べても,頻繁すぎる。
テクノロジの変化が速いのがその一番の理由だ。もう一つ理由を挙げるとすれば,Borlandが,それに対応できるだけの力を持ってきたということだ。Delphiなどの開発ツールを,設計し,コーディング/ビルドし,テストするサイクルを速く回せるようになった。3年前に比べて,当社の開発陣はかなり大きくなったんだ。良い方向に変わっているのだと考えて欲しい。
──.NET対応にあたって,VS .NETのIDEを採用することは考えなかったのか。そうすればコンパイラを作るだけで済む。
IDE,コンパイラ,コンポーネント・フレームワーク,それらは当社の競争力の根本だ。当社のIDEは世界のどんなIDEよりも使いやすい。VS .NETのIDEを使おうと考えたことはない。
──新IDE「Galileo」はDelphiだけでなく,ほかの製品にも使えるのではないか。そんなに使いやすいなら,Visual BasicやC#でGalileoを使う価値もあるはずだ。
コンセプトとしては,Delphi,C++Builder,KylixのIDEはすべてGalileoにするつもりだ。ただ,実際にそれがどのように製品化されるかは,話せる段階にない。ひとまず,Galileo搭載のDelphi 8を作るのが第一だ。.NET FrameworkにはVBのコンパイラ,C#のコンパイラが入っている。Galileoでそれらを使うことも技術的には可能だ。ただ,Microsoftが当社に何をさせたくて,何をさせたくないかに左右されるだろう。
──KylixでGalileoを使うということは,Linux上に.NETの実行環境が用意されるということか。
.NETの開発環境をUNIX上に作ろうというMonoプロジェクトの活動を注意深くウォッチしている。非公式にだが,Borlandの技術者がフィードバックをしたりもしている。
──Kylix 3にDelphiとC++の両方を入れたのはなぜ? 別の製品にするかと思っていた。
1パッケージの値段で,両方使える方が開発者のためにいいと思ったから。当社の売上高増にはマイナスかもしれないが。
──Kylixの売り上げは思うように伸びていないのではないか。
Linuxのマーケットはソフトウエアを売るのが難しい。特に,これまでLinuxを支えてきたコミュニティでは,ソフトウエアが無償であることが今でも普通だ。ただ,Linuxでビジネスをしようという人々が少しずつ出てきているし,彼らは総コストやソフト開発の生産性を意識する人たちだ。Kylixを買う方が安くつくということが,だんだん多くの人にわかってもらえるだろう。
──DelphiやKylixの開発言語をこれまで「Object Pascal」と呼んでいたのが,Kylix 3から「Delphi language」という呼び方に変わった。理由は何か。
Delphiの言語をObject Pascalと呼んだのは歴史的な間違いで,今回それを修正したものだ。Object Pascalは米Apple Computerと米Think Technologies(後に米Symantecに買収された)が作ったもので,Delphiの言語はそれをさらに拡張したものだった。厳密には,最初からObject Pascalではなく,Delphi languageと呼ぶべきだったのだ。最近は「Pascalは古い」とDelphiを批判する人もいる。Delphiの言語は長年の努力の末,とても洗練されたものだ。それを訴えたいという気持ちもこめて,Delphi languageと呼ぶことにした。感情的にはPascalと呼び続けたいのだけれど。
──日本の開発者に言いたいことがあるか。
Borlandのテクノロジへの投資は安全だ,と言いたい。開発ツールを作っている会社の中で,当社ほど過去との互換性を重視しているところはない。Turbo Pascalのコードだって,今のDelphiで使えるんだ。新しい技術や環境が出てきても,うちの製品を使っていれば書き直す必要はない。VB .NETみたいなことは起きないんだ。
(日経ソフトウエア)
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