
──7四半期連続で黒字になるなど,業績は好調なようですね。
全世界に1500万人の開発者がいて,500万人が当社の製品を使っている。当社のユーザーの半分は比較的大きな企業で働いている開発者で,あとの半分はスモール・ビジネスまたは独立してやっている開発者だ。大企業ユーザーが増えてきたことも業績に寄与している。
──なぜ大企業ユーザーが増えているのでしょう。
一つは当社の製品が,大企業が求める機能を備えるようになってきたからだ。1997年に出したDelphi 3のClient/Server SuiteでOracleやDB2に接続する事例が増えてきた。その後,Javaが大企業ユーザーでメジャーになって,JBuilderが入っていった。もう一つの原因としては,大企業がシステム開発要員を自前で雇うようになったことが挙げられるだろう。大企業がWebシステムの開発をコンサルティング会社などにアウトソースして失敗した例はけっこうある。社員でないとコントロールできないし,迅速な開発もできないということがわかってきたのではないだろうか。
──Borlandらしくないのでは?
確かにうちは小さな会社で,独立した開発者にTurbo Pascalを売るところからスタートした。だが,大企業ユーザーと独立した開発者は,二者択一しなければならないものじゃない。半分が大企業でも,残りの半分を捨てるわけではない。我々はだれも置き去りにはしない(We never left anyone behind)。
──Javaはなぜ大企業ユーザーに受けたのでしょうか。
C++よりシンプルでありながら,C++に近いからだろう。Windows,Solaris,hp-ux,Macintoshという具合にマルチプラットホームで使えるのに加えて,携帯電話でも使えるような守備範囲の広さも持ち合わせている。
──でも,実行速度は遅いですね。
DelphiがWindows APIを直接呼ぶのに比べれば遅いのは当然だ。しかし,ボタンを数百個も表示するようなテストをすれば差は出るだろうけど,現実のプログラムではほとんど差はないだろう。私は米MicrosoftのPDC(Professional Developers Conference)や米Sun MicrosystemsのJavaOneに行ってデモをした。PDCの参加者は6500人,JavaOneは2万6000人。Javaのニーズは本物だ。
──.NETはやらないのですか。
Delphi .NETを作っている。いつ出すのかって聞かれるだろうが,それは,顧客がそれを必要として,完成した時点でとしか言えない。.NETはMicrosoft自身まだ製品を出していない。2002年初めにVisual Studio .NETが出て,次にInternet Explorerの次期バージョン7で.NETの実行環境CLR(Common Language Runtime)を配って,2003年かどこかに.NETを実装したWindowsが出るのではないかと思う。そのときには,Windowsの中身は相当変わることになるだろう。とにかく,顧客が.NETを使うときには,Delphi .NETが存在する。
──Kylixの売れ行きには満足していますか?
当社はこれまでLinuxの開発ツールを出したことがない。つまりシェアは0%だった。でも,最近のある調査ではKylixを出して15%に上がったらしい。もっとも競合しているのはフリーソフトだから,ちょっと難しいのだが。少なくとも,GNUのC++と違う開発ツールがあるということだけは知ってもらえたと思う。Linuxの世界はまだまだ変わるし,Kylixも変わる。Linuxはサーバー向けという認識が強いから,Kylix 2のサーバー・アプリケーション開発機能は人気が出るだろう。
──C++Builderの新製品がご無沙汰です。
2002年には,C++Builderの新版を出す。Linuxで動くC++Builderも計画している。ただ,これの名前は未定だ。
──JBuilder 6のUML(Unified Modeling Language)図生成,リファクタリング支援,テスト支援機構は面白いですね。Delphiには入れないのですか?
一つのプロダクトに入れているのだから,ほかのプロダクトに入れない理由がないだろう?
──日本のプログラマをどう思いますか?
携帯電話みたいな伝統的でないデバイスでのコンピューティングは,日本が先導していると思う。Javaの企業システムも,すごいものを作っている。日本のプログラマはとてもアグレッシブだ。
──それは,Borlandユーザーばかりと会っているからなのでは?
そうかもしれない(笑)。だから私は16年もこの会社にいるんだ。
(日経ソフトウエア)