米CompuwareのJoe Nathan社長兼最高執行責任者(COO)が東京で開催された日本コンピュウェア主催のイベント「Compuware User Conference 2001」に来日,記者との会見に応じた。会見の要旨は以下の通り。

──多岐にわたる製品ラインナップで,特に力を入れているのは何ですか。

 現在我々は,メインフレーム系と分散系の大きく二系列のソフトウエア製品を持っている。メインフレーム系は顧客ベースは非常に大きいが,今後の成長率はそれほど大きくないだろう。逆に分散系は,現在の顧客ベースはさほど大きくないが今後大きく伸びる。したがって今後は,分散系に焦点を当てていく。この傾向は世界的に同じだが,日本の場合は米,英,オーストラリアなどの市場に比べると,まだメインフレーム分野のビジネスを伸ばせる余地があると思う。

──日本では現在,情報システムへの投資を削減する企業が増えています。

 Compuwareの製品は,プログラマの生産性を上げるためのツールだ。システム化への投資が減っている時期にこそ,その価値を発揮する。インストールして使い始めた翌日には生産効率が上昇したことがわかるだろう。

──Windows向け開発ツールNuMegaシリーズは今後どうなりますか。

 NuMegaシリーズは,Microsoftの戦略に追随していくのが基本方針だ。したがって,Windows XPや .NETなど新しい機能が登場するごとに,対応した製品を出していく。もっとも,出荷は少々遅れるかもしれないが…。Microsoft社はNuMegaの最大のユーザー企業だ。Microsoftの開発者たちはNuMegaを使って新製品を開発している。
 もう一つ,これはMicrosoftにとってはあまりうれしくないことかもしれないが,最近WindowsプログラマからJavaを使いたいという要望が多い。NuMegaのデバッグ支援製品(NuMega DevPartner Studio)では,今後Windows上のJavaをサポートする予定だ。

──Java VM(仮想マシン)の問題などWindowsでJavaを使うことにはいろいろ問題があるのでは?

 確かにそうかもしれない。しかし我々は,米Sun MicrosystemsのiPlanet(アプリケーション・サーバー)などに対応した製品も持っており,SunのJava VMでの開発経験もある。MicrosoftとSunの両者のJavaに関する理念の差を極小化できる立場にいると思う。

──Visual Studio .NET対応製品の具体的なスケジュールは?

 Visual Studio .NETに関しては,現在の製品(NuMega DevPartner Studio)で一部対応している。2002年第1四半期に本格的な製品を出す予定だ。ただし,Visual Studio .NETの出荷が遅れれば,当社の製品の出荷も遅れる。

──最近,開発ツールに依存しすぎて,OSなど基本的なことを知らない開発者も多いと言われています。

 それは,これまでも常に問題になっていたことだ。一部のプログラマは,OSなどの環境を理解していない,自分が書いたコードがマシンにどんな影響を与えるかを理解していない,一方でリソースは限りないと思っている。こうした状況で問題が起こると,どうやってデバッグしていいかわからない。
 問題は,プログラマはエンジニアでなくても構わない,または特別なトレーニングを受けてなくてもいい,といった風潮にあるように思う。OSなどを学ぶ時間を取らず,とりあえずプログラミングを始めて,後はやりながら覚えればいい,という感覚だ。もっとも,これに対する解決策は私にもよくわからない。より良い教育をするのか,ツールや環境を改善するのか…。
 最近登場するソフトウエアはどれも,必要以上の機能が満載されている。新しいマシンで新しいアプリケーションを実行するために,新しいソフトウエアが必要になるわけだが,必要以上のテクノロジが盛り込まれている。

──御社の製品にはそうした傾向はないのですか。

 ある意味では開発者を甘やかしている部分もあるかもしれない。テクノロジを売るソフトウエア・ベンダーは,最初に製品を出すときに機能を満載し,その後,ユーザーからのニーズでどんどん機能を拡張する。しかし,どこかで追加する新機能がそれほど価値を持たなくなる時が来る。こうなったら機能を拡張するより,新しい製品の開発にエンジニアを振り分けた方が良い。ソフトウエア会社は,いつ新製品に移行するかを見極めなければならないのだが,それがうまくできる企業は少ない。当社にも同じことが言える。一度作ったソフトウエアは自分の子供のようなもので,なかなかそれから離れることができない。

(日経ソフトウエア)