米IBMは5月29日,アプリケーション・サーバー「WebSphere(ウェブスフィア) Application Server」,それと組み合わせて使うWebページ作成ツール「WebSphere Studio」,Java開発ツール「VisualAge for Java」の新版を発表した。いずれもバージョン4である。WebSphere本体の改良点は,(1)性能を向上させ,同じハードウエアでより多くのトランザクションを処理できるようにした,(2)他ソフトとの連携強化(IMS,CICS,DB2,MQSeries,Tivoli,Lotus Domino,SQL Server,CORBA,ActiveX,J2EE JCAなど),(3)新しいプロトコル(UDDI,SOAP,WSDLなど)に対応し,Webサービス・アプリケーションを作れる,(4)Webページをユーザーの言語,通貨,タイムゾーンなどに自動的に対応させる機能を付加,(5)携帯情報端末用のWebページを作れる,などである。また今回,WebSphere Application Serverに開発用途専用の「Developer Edition」を追加,これについては無償配布するとした。

 価格と出荷時期は以下の通り。WebSphere Application Server V4はシングル・サーバーで8000ドル,マルチサーバーで1万2000ドル,出荷は6月30日に開始する。同Developer Editionの配布開始も6月30日だ。VisualAge for Java Version 4はProfessional Editionが149ドル,Enterprise Editionが2999ドル。出荷は7月から。WebSphere Studio Version 4はProfessional Editionが599ドル,Advanced Editionが1999ドル,出荷は7月からである。

 日本IBMは千葉県浦安市で5月30日から展示会「websphere2001 tokyo」を開催,同展では米IBMでSoftware Solutions Division Enterprise Transactionsのディレクタを務めるDavid J. Chew氏らがWebSphereの新バージョンについて報道関係者に説明した。会見の要旨は以下の通り。

──時代は「eビジネス」から「ダイナミックeビジネス」へ移ろうとしている。そのコアになるのがWebサービスを使ったアプリケーションだ。WebSphereバージョン4はその基盤を提供する製品である。Webサービスは言い方を変えれば,プログラム同士がこれまでよりも複雑な,そして知的なトランザクションを行うものだ。ビジネス・ルールを設定し,人手を介さずにビジネス・ディシジョンを行うようなシステムが作られるようになるだろう。

──WebSphereの大きな競合相手は米Microsoftの.NET,そして米BEA SystemsのWebLogicだ。Microsoftはプロプライエタリ(独自)OSであるWindowsにこだわっているが,IBMにはオープンな財産(heritage)がある。それに,Microsoftはインターネットが基盤になると気付くのが遅すぎた。BEAは,コンセプト自体は正しく理解しているが,まだそれを実現する製品がない。うちはWebSphereでそれをすでに出荷しているのだ。Webアプリケーション・サーバーの分野では,1999年末にはBEAが24%,我々が16%のシェアを獲得していた。2000年末にはBEAが35%に伸びたが,我々は30%と差を縮めている。今度の新製品で逆転するだろう。

──(記者の「NEC,富士通,日立製作所,米IBMがLinuxの機能強化で協力すると発表したことをどう思うか」という質問に対して):エキサイティングなことだが,驚くべきことではない。OSで差別化する時代ではないからだ。

──(記者の「Javaには性能面で不安があるが」という質問に対して):ネイティブ・コードのプログラム,たとえばC++と比べてJavaが速いとは言えないが,COBOLよりはいいと思う。レガシー・システムとCOBOLを使った開発をしてきた会社は,最近Javaを選ぶようになった。そういう会社をサポートするのは我々の役目だ。

(日経ソフトウエア)