マイクロソフトは2001年6月までに,Officeスイートの新版「Office XP」を出荷開始する。違法コピー防止機能やユーザーの作業を効果的に支援する「スマートタグ」,作業メニューを常時表示する「作業ウィンドウ」など新機能を備える。しかし,開発プラットフォームとして見たとき,Office XPと現版のOffice 2000で大きな違いはない。標準で備えるプログラミング言語VBA(Visual Basic for Applications)6.3は,既存のVBAと言語仕様はまったく同じで,「既存のVBAアプリケーションは,Office XPでも動作する」(磯貝直之Office Developerプロダクトマネージャ)。Office 2000の環境でVBAプログラムを開発してきた人にとっては朗報と言える。

 Office XPのオブジェクト・モデルは,Office 97/2000に若干の追加などがあるものの大きな変更はない。WordやExcelのファイル形式も,Office 97/2000と同じだ。Accessについてのみ,パフォーマンスを向上させたAccess 2002形式と呼ぶ新ファイル・フォーマットがあるが,デフォルトでは従来のAccess 2000形式を選択するようになっている。

 一方,注目のユーザー支援機能であるスマートタグは,アプリケーション操作中のユーザーが次に何をしたいかをOffice XPが先取りし,使う可能性のある機能のリスト(スマートタグ)を表示するもの。例えば,顧客番号と受注データを入力するExcel/VBAのアプリケーションを考えよう。これまではユーザーが,受注データの入力画面を呼び出したり,顧客情報を参照するためのウィンドウを呼び出すなどの「アプリケーションの操作手順」を知っておく必要があった。しかしスマートタグを使えば,顧客番号を入力したときに,「(1)受注データを入力する,(2)顧客情報を参照する」といった,次にすべき操作のリストがポップアップメニューで表示される。ユーザーは「どんな機能があるのか」「どのメニューをたどればその機能が使えるのか」といったことを,覚えておく必要がない。

 スマートタグの実体は,COM(Component Object Model)コンポーネントあるいはXML(Extensible Markup Language)ファイルである。標準で備えるスマートタグ以外に,「スマートタグSDK(開発キット)」(米Microsoftが無償配布しているものの日本語版)を使えば,独自にスマートタグを開発することもできる(スマートタグSDKはDeveloper版のみ付属)。アプリケーション開発者にとって,Office XPへ移行すべきかどうかは,「スマートタグをどこまで活用するか」にかかっているかもしれない。

 このほかOffice XPのボリューム・ライセンス版には,Office XPを企業内で管理/展開するツール群「Office XPリソースキット」が, Developer版には,リソースキットに加えて,ワークフロー作成を支援するツールやVBAソースコード再利用ツールなどが付属する。グループ単位で掲示板や予定表,ドキュメントなどを共有できる簡易Webサイト構築キット「SharePoint Team Services」も新たに装備する。

 Office XPの製品ラインナップは以下の通りである。

製品名/Edition名 Professional Special Edition Professional With FrontPage Professional Standard Personal Developer
Word
Excel
Outlook
PowerPoint なし
Access なし なし
FrontPage なし なし なし
Publisher なし なし なし なし なし
Bookshelf Basic 3.0
メディア・コンテンツ(クリップアート集など) なし
IntelliMouse Optical なし なし なし なし なし
開発ツール(スマートタグSDKなど) なし なし なし なし なし
Step by Stepインタラクティブ(チュートリアル)
SharePoint Team Services(Webサイト構築キット) なし なし なし
推定小売価格(オープン/アップグレード価格) 4万1800円(アップグレードのみ) ライセンス販売のみ 6万9800円/3万7800円 5万7800円/2万8000円 4万4800円/2万1800円 9万4800円/4万9800円

(注)既存の単体製品からスイートへのアップグレードはできない。また,各単体製品のバージョンは2002となる。
(日経ソフトウエア)