米Oracleの開発ツール製品総責任者を務めるSohaib Abbasi上級副社長(写真)に同社の戦略について聞いた。同氏は,日本オラクルが12月14日~15日に東京ドームで開催したイベント「Oracle Open World 2000」に合わせて来日した。

Oracle9iの登場で,新ツールや新サービスの発表が相次いでいるが。
 中でも,Oracle9i Application Server(9iAS)(詳細はこちら)が装備する「Oracle Portal」に注目してほしい。これは従来からあるWeb開発ツール「WebDB」を進化させたもので,企業向けポータル・サイト(Enterprise Potal)を容易に構築する機能だ。従来,ユーザーはWindowsのデスクトップにあるファイル群の中から必要な情報を見つけ出していた。しかしインターネット時代では,情報はインターネットの向こうに無数に存在する。つまり,複数のWebサイトの情報を集めたポータル・サイトの画面こそがWindowsに代わる新しいデスクトップになる。

どのようにポータル・サイトを作るのか。
 Oracle Portalには,既存のWebサイトが提供する各種サービス(検索エンジンやニュース提供など)を部品のように組み込める。このときに使うのが,ポートレット(Portlet)と呼ぶHTMLベースのコンポーネントのメカニズムだ。ポートレットは,開発者があらゆる情報を一つのインタフェースでユーザーに提供することを狙ったもので,ポータル・サイトの中に既存のアプリケーションを盛り込みたいときに使う。ポートレットを作るのは簡単だ。既存のOracle Developer SuiteやJDeveloper Suiteで開発したアプリケーションなら,容易にポートレットとして生成できる。また,他社の開発ツール,例えばMicrosoftの開発ツールを使ったアプリケーションや,COBOLなどレガシーな言語で開発したものでも可能だ。このために我々は,ポートレット開発ツールPDK(Poratl Development Kit)を用意する。

Oracle Portalはツールを購入しないと利用できないのか。
 我々は,この仕組みを,ASP(Application Service Provider)のサービスとしても提供する。ぜひportal.oracle.com(ポータル・オラクル・ドットコム)にアクセスしてほしい。このサービスを使えば,開発者はハードウエアもソフトウエアもテスト・ツールも購入する必要がない。実は,我々自身がこの仕組みを使って社内システムを構築している。このシステムの導入前は,ワールドワイド4万5000人の全従業員に対し,約2000のWebサイトを社内に構築していた。しかし,今はOracle Portal一つに集約した。

利用するにあたってコストはどれくらいかかるのか?
 90日間フリー(無料)だ。その後はユーザー数に関係なく,月に100ドルでいい。

新開発ツールOracle9i Developer Suiteとはどんな製品なのか。
 従来のOracle Developer SuiteとJDeveloper Suiteを統合したものと考えてほしい。ソフトウエア開発の分析/設計から実装までトータルに支援する。特徴は,UML(Unified Modeling Language)のサポート,画面開発ツールFormsの機能アップ,Java開発の三つだ。設計部分はUMLを使ったモデリング・ツールを用意する。クラス図からJavaのコンポーネントを生成可能だ。また,FormsはHTMLをベースにしつつ,従来のWindows環境で提供していたものと同じ機能,同じパフォーマンスを実現する。これは我々が開発プロジェクト名「Cherokee」と呼んでいたものだ。

Oracleが提案するこれからのアプリケーション開発とはどんなものか。
 一つはOracle PortalのようなASPサービスによる開発。ブラウザ・ベースで操作は簡単だし,シンプルなアプリケーションを安価に作れる。もう一つは,Oracle9i Developer Suiteを使った,より本格的なアプリケーション開発だ。こちらはプロフェッショナルな開発者が利用するだろう。9i Developer Suiteを使って,Oracle Portal向けのポートレットを構築することもできる。

米Microsoftの.NET戦略についてどう考えているか。
 Microsoftは,ずっとパソコンをベースにしてきた会社だ。最近ようやくインターネットへ軌道修正してきたにすぎない。しかし我々は5年前からこの分野に取り組んでいる。ノウハウもある。彼らが.NETを実現していくには,まだまだ時間がかかるだろう。しかし我々の技術やサービスは,今すぐに使える。.NETではなく.NOW(ドットナウ)なのだ。

(日経ソフトウェア)