▲米シネマナウのカート・マービスCEO | ▲シネマナウジャパンの冨井俊行社長 |
■4月のサービス開始時にメジャー作品をラインナップするという話だったが、なぜそれが実現しなかったのか。
マービス まず、分かってほしいのは、我々が米国でサービスを始めたのが1999年7月。初めてメジャースタジオと契約できたのが2002年の9月。そこまでには3年を要した。日本でサービスを始めてから3カ月しか経っていないことを考えると、大手スタジオと契約に至るにはまだ時間がかかりそうだ。4月以前の段階ではビジネス的な面での話は順調に進み、メジャー作品を提供できる方向で話はまとまっていた。しかし、その後弁護士などとの話し合いや、膨大な量の契約書の作成に当たってかなり時間がかかってしまったのも原因の一つだだ。(マービス氏)
■メジャー作品と呼ばれるような映画はいつ頃配信予定か。
マービス まず今年中には最低1社以上のメジャースタジオと契約する予定だ。契約に至れば、その時点で3桁台の量のコンテンツを一気に提供できると考えている。
冨井 8月初旬から今よりもっと人気のある作品や映画以外にも海外のコンテンツやドキュメント、スポーツなどもラインナップに追加していく予定だ。ユーザー獲得に向けて広告なども出していきたいと考えている。8月からは早い段階でメジャー作品をラインナップできるようにスピードを上げて調整していく。
■米国でのサービスを成功させたことは、メジャースタジオと日本での配信契約を結ぶことに関してどういった面でプラスになるのか。
マービス 我々とアメリカのスタジオとの信頼関係はかなり厚いと自負している。シネマナウが開発した動画配信などのコンテンツ管理やユーザー管理などを備えた「PatchBay(パッチベイ)」というシステムも高く評価されてもいる。
冨井 例えば米国で築き上げてきた信頼関係は、契約内容や条件面で優位であるとは言えると思う。コンテンツを販売できる期間や、ダウンロードやストリーミングなど配信方法、あるいは配信地域などに関してお互いに信頼関係があるということはそれだけ良い契約条件でコンテンツを融通してもらえる可能性は十分ある。
■現在、米国での配信方法はストリーミング、日本ではダウンロードだけだ。
マービス 今後はコンテンツをダウンロードして購入できるサービスも始めていこうかとも考えている。米国では既に「ダウンロードさせる=危険」という考え方はだんだん薄れてきている面もある。今後はそういう売り切りの形式に対応するスタジオも出てくる可能性もある。
冨井 日本はブロードバンドなどのインフラが整っていて、サイズの大きなコンテンツのダウンロード時間にあまりストレスを感じない。また、ダウンロードにすることで配信のコストダウンも図れる。ただし、今後日本のコンテンツを配信するようになると、日本のコンテンツ保有者は特にコンテンツ保護の観点からストリーミングにこだわる部分もあるので、対応しなくてはならないと考えてはいる。
■ポータルサイトやプロバイダーなどと協力していくつもりはあるか。
冨井 例えば米国のシネマナウは米マイクロソフトの「MSN」や米ヤフーのWebページ内で展開しているし、家電量販店のベストバイなどでは、シネマナウで利用できるクーポン券を配ったりしている。そういったパートナーシップはもちろん日本でも築いていきたい。
■日本でもテレビ局の参入などでにわかにVODサービスが盛り上がってきている。
マービス 確かに少しずつではあるがサービスが出てきた。ただ、我々が現在米国で配信しているコンテンツは約4000本。ライブラリーとしては約8000本を所有している。そのラインナップには映画で「オーシャンズ12」「Mr.インクレディブル」などメジャー作品と呼ばれるものが数多くある。しかもセットトップボックスなどのクローズな環境ではなく、パソコンにこれらのコンテンツを配信しているのだ。(Gyaoなど)メジャーな映画を配信しているサービスが登場してきたといっても、その数を見るとサービスが充実しているとは思えない。まだまだ日本のVOD業界は底上げを必要としている時期。我々を含め、さまざまな企業が一緒ににの業界を盛り上げていく必要がある。