7月21日に発表された中国の人民元の2%切り上げは,国内で販売されるパソコン価格に影響を与えるのか。これについて,日経パソコン編集部がメーカー各社に聞き取り調査したところ,「末端価格への影響は当面ほとんどない」ことが分かった。

 国内最大手のNECは,企業向けパソコンと家庭向けパソコンのベースユニット,家庭向けパソコンの組み立ての一部を中国および台湾で行っている。シェア2位の富士通も,ノートパソコンは島根工場だが,国内でのデスクトップパソコンの組み立てに用いるベースユニットは中国から輸入している。両社とも今回の元切り上げについて,「影響は軽微」としている。

 直販メーカーでは,国内のパソコンシェアで3位のデル,6位の日本HPも「製品価格への影響はない」としている。

 中国からの輸入に関する決済が円ドルベースで行われていることに加え,為替予約によって,為替レートの急激な変動がコストに与える影響は限定的になっている。パソコンの製造コストの中で,割合が一番大きいのはCPU,チップセットといった部品価格。ベースユニットや本体組み立ての製造コストに影響を与える人民元レートの切り上げは,そもそものコストに占める割合が小さいことから,すぐに価格に転嫁されることはないという。

 現在,メーカー各社では今秋に発売する新製品の発表を控えているが,これら新製品については価格が急激に上がるということはなさそうだ。

 ただし,「コストの押し上げ要因になることは間違いない」(国内証券会社のある総合電機担当アナリスト)。メーカー各社でも長期的には人民元切り上げの影響があると見ており,来春以降のパソコン市場では価格が上ぶれする可能性も否定できない。

(佐藤 新=日経パソコン