「全世界でノート市場の成長は調査会社などの予測を上回るペースで進んでいる」米インテル モビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏
 インテルは7月13日、「インテルCentrinoモバイル・テクノロジ 今日、そして明日」と題した説明会を開催。次世代ノート用CPU「Yonah(ヨナ、開発コード名)」の概要を公開した。

 インテルは、CPUのコア(計算回路)を2個にしたデュアルコアCPUを次世代の主力と位置づけており、すでにデスクトップ用ではPentium DなどのデュアルコアCPUの出荷を始めている。Yonahはノートでは初めて、デュアルコアに対応したCPUになる。そして、Yonahの最大の特徴は、2次キャッシュを2個のコアで共有することだ。Pentium Dでは2次キャッシュをそれぞれが持っており、一方のコアが書き換えたキャッシュデータを、他方のコアが利用するときは、「メモリーを経由することになり、時間のロスが多い」(米インテル モビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏)。Yonahは共有する構造をとっていることで、メモリーを経由しないので性能を向上させることができるのだ。さらに1コア当たりが使える2次キャッシュ容量も増える。「2次キャッシュをそれぞれのコアが持っている場合、合計2MBのキャッシュといっても、1個が使えるのは1MBまで。Yonahは共有しているので、1個のCPUが2MBのキャッシュを使うことも可能だ」(同氏)。メモリーとデータをやり取りするバスも1本で済むので、「消費電力も増えない」(同氏)という。キャッシュ性能を向上させるために、事前にメモリーからデータを先読みしておく機能も備えるという。

 YonahではFSB(フロントサイドバス)の速度も667MHzに上げる(これまでは最大533MHz)。バッファオーバーフローによる攻撃を防ぐNX機能も備える。65nmプロセスで製造され、トランジスタ数は1億5160万個(既存のPentium Mは7700万個)。2006年第1四半期から出荷を始める予定だ。なお、デスクトップでは進んでいる64ビット技術(EM64T)は、Yonahでは採用されない。「64ビット対応は追加のトランジスターが必要になり、電力消費も大きくなる。Yonahでは入れないことを選択した」という(同氏)。

 Pentium Dが既存のPentium 4を張り合わせた構造になっており、“急ごしらえのCPU”と印象があるが、Yonahはデュアコアを最初から考慮して設計されたCPUのように見える。実際、「モバイルに適したデュアルコアにするよう、2~3年かけて設計をした」(同氏)という。(倉田 雅弘=日経パソコン)

Yonahのコア写真。下半分にあるのが2次キャッシュ。上の左右にあるCPUコアから共有できる構造になっている Yonahは2次キャッシュが2MB。FSBも高速になり、NX機能も備える。プロセス技術は65nmで1億5160万個のトランジスタを実装する。2006年第1四半期に出荷を予定