トレンドマイクロは6月23日,同社のウイルス対策ソフトが原因でコンピュータに大規模な障害が発生した事件に関して,事件の経緯や被害の実態,今後の対策を総括した。

 エバ・チェン代表取締役社長兼CEOは,冒頭に「パターン・ファイル障害の一件で,セキュリティ・インフラストラクチャ・サービスを提供する企業としての責任を痛感した」と述べ,今後はパターン・ファイル配信のスピードだけでなく,品質との両立を目指すとした。「ウイルス対策ソフト・メーカーは,競合他社に比べて1分でも早くパターン・ファイルを配信することを考えてやってきた。しかし,最も重要なのは競合他社でなく顧客」と,ユーザー重視の姿勢をあらためて強調した。

 パターン・ファイル障害の復旧窓口を利用したユーザーは,5月9日から6月15日までの集計で,個人ユーザーが2万8300件(同社の個人ユーザー350万件の0.8%),法人では700件(法人ユーザー11万契約の0.6%)。

 パターン・ファイルに関しては,4月30日以降に48件のパターン・ファイルを配信しているという。品質を高めるために,新しく検証プロセスを追加。以前よりプロセスが増えて検証に時間が必要になった分は,設備の増強やテストの自動化を進めるなどで対応した。

 新プロセス追加当初は検証に数時間かかっていたが,今では20分前後で検証が可能だという。また,「人手が入っている以上,100回検証しても絶対安全とはいえない」(エバ・チェンCEO)として,外部監査を導入することも明らかにした。

 今後は,スパイウエアやフィッシング詐欺などの新たな脅威に対抗するため,企業買収によって迅速な新サービスを提供していくという。実際,同社は5月にスパイウエア策ツールなどを提供する米インターミュート,6月には迷惑メール対策やIPアドレスの信頼性を監視・評価するレピュテーションサービスなどを手がける米ケルケアをそれぞれ買収している。

 同社は7月11日より日時のパターンファイル更新を再開する。

田村 奈央=日経パソコン

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