マーチン・ウォーカー氏 グリッド・コンピューティングの技術が注目を集める中、米ヒューレット・パッカードのハイパフォーマンス・テクニカル・コンピューティング部門の幹部を務めるマーチン・ウォーカー氏が来日、BizTech記者に「グリッド技術を企業の情報システムの中で生かすには、『システムへの信頼』というヒトの問題を解決することが重要になるだろう。難しいのは技術よりもヒトの問題だ」と指摘した。ウォーカー氏は、グリッド技術の標準化を進めるGlobal Grid Forum(GGF)でも幹部として活躍している。

 グリッド技術を企業情報システムに適用すれば、約15%と言われているサーバーの使用率を高めることができ、情報システムもおける投資効率を高めることができる。A部門が持つサーバーなどのシステム資源と、B部門が持つ資源を論理的に一つのものとして運用し、A部門で処理能力が不足する場合には、B部門の資源の一部を動的に割り当てるといった使い方が可能になる。

 しかし、「こうしたメリットを利用部門にきちんと説明することができなければ、彼らは『われわれは本当にメリットを享受できているのだろうか』と不信を持つようになる」(ウォーカー氏)。不信を持たれた情報システムは、利用者の満足度を高めることができない。技術的な側面に焦点が当てられているグリッド技術だが、その採用に当たっては、企業のITガバナンスの質が試されることになる。

(森 永輔=BizTech編集)