NTTデータは2002年12月20日,グリッド・コンピューティングの実験を開始する。インターネット上にあるパソコンのリソースを活用して,スーパー・コンピュータ級の処理能力が必要な計算を行うもの。期間は3カ月。海外ではSETI@homeなどPCベースのグリッド・コンピューティングを実用化した例があるが,その日本版といえる。

 NTTデータは,米United Devices製のエンジンをベースにグリッド・コンピューティング事業「cell computing」を2003年から事業化する。今回の実験は,それに向けたノウハウ蓄積の側面を持つ。実験には日本IBMがハードやソフトを提供するするほか,インテル,NTT東日本,マイクロソフトがプロモーション協力などの形で参加する。

 解析するテーマは,東亞合成が行う「ヒトの遺伝子情報からの周期性の発見」とNTT物性科学基礎研究所が行う「光学的に新たな特徴を持つ材質の設計図の作成」の2つ。PCは,一般から広く募る。実験に参加したい人は,Webサイトからメンバー・ソフトと呼ぶクライアント・アプリケーションをダウンロードし,PCに常駐させる。

 アプリケーションは,NTTデータが運用するサーバーからデータをダウンロードし,設定したスケジュールに従って解析処理を行う。「メモリーは,アプリケーションにもよるが10Mから30Mバイトを使う」(NTTデータ 技術開発本部 バイオインフォマティクスグループ cell computing プロジェクトリーダ 鑓水訟氏氏)。プロトコルはHTTPとHTTPSを使うため,ポート80番と443番が空いていればファイアウオール内にある企業のパソコンでも実験に参加できる。

 1回にダウンロードするデータは,1.5GHzのPentium 4を使った場合に24時間で解析が完了する程度の大きさ。一定時間ごとに計算結果をディスクに保存するため,処理途中でPCの電源を落としてもその時点から再開できる。通信途中のデータとPCのディスク上のファイルは168ビットのトリプルDESで暗号化することで,盗聴や改ざんを防ぐ。

 実験の参加者は,数十万人を目標にする。実験に参加した人にはWebサイトなどを通じて実験の途中経過をフィードバックしたり,プレゼントを用意したりする。

(尾崎 憲和=日経オープンシステム)