NAS(Network Attached Storage)メーカーの米Network Appliance(以下NetApp)は,SAN(Storage Area Network)機能を統合する新製品FAS900シリーズを日本で発売した。価格は7200万円前後(F825c,物理容量6Tバイトの場合)から。米本社で製品開発を統括するSAN/iSAN Business Unit Vice PresidentのRich Clifton氏に,その狙いと競合製品との違いなどを聞いた。(聞き手は尾崎 憲和=日経オープンシステム)

---NAS製品に特化してきたNetwork Applianceが,なぜ今,SAN/NAS統合製品を投入したのか
 SANとNASは市場的にも技術的にも垣根がなくなりつつある。企業は1~2年先を見てシステムを構築すべきだが,SANかNASのどちらかに限定した製品はそのころには使えなくなっている可能性が高い。両方の技術を取り入れた製品を今のうちに投入するのが得策だと考えた。また,既にSANでシステムを構築したユーザーに購入してもらうためにも,SANに対応する機能が必要だった。
 FAS900は,SANで使われるファイバ・チャネルとNASで使われるイーサネットの両方の接続ポートを持つ。NFS(Network File System),CIFS(Common Internet File System),DAFS(Direct Access File System)などNASで使われるプロトコルに加え,SANで使うSCSIコマンドをサポートする。つまり1台で,SAN製品としてもNAS製品としても使える。

---Hewlett-Packardや富士通も,SANとNASを統合するストレージや管理ソフトを発売している
 他社製品は,SANで利用する領域と,NASで利用する領域とでディスクを分ける必要がある。NAS製品はストレージ側でファイル・システムを持つのに対し,SAN製品ではサーバー側で持つという違いがあり,ディスクのフォーマットが異なってしまうためだ。異なる2つのシステムが1つのきょう体に入っているに過ぎず,例えばディスクの数を増やしても,ストライピングによる性能向上のメリットを享受しにくい。
 FAS900は,SANのファイバ・チャネル経由であろうとNASのイーサネット経由であろうと,WAFLと呼ぶストレージ上の独自ファイル・システムが一元的にデータの読み書きを制御する。ファイバ・チャネル経由の場合はユーザーにはサーバーが持つファイル・システムを使っているように見えるが,ストレージ上ではSANもNASも関係なくデータ領域を共有している。SANとNASとでディスク領域を分けずにストライピングを行うため,物理構成を最適化しやすい。ただし,SANとNASの間でファイルの共有はできない。

---FAS900を購入したユーザーは,SANとNASどちらの機能を使うべきか
 IPの技術者やシステムに投資してきた企業はNASを使えばいい。ファイバ・チャネル関連の技術者やシステムに投資してきた企業はSANを使えばいい。もちろん,先を見越して既存の資産を捨てる選択肢もある。また,MS Exchange ServerのようにSANでなければ動かないアプリケーションは,当然,SANを使うことになる。
 ただ,用途による使い分けは意味がない。RDBMSのデータを格納するにはSANの方が適しているとよく言われるが,それは間違いだ。欧州の大手保険会社が行った検証テストでは,動作周波数675MHzのCPUを20個搭載したFujitsu Siemens Computers製サーバーPRIMEPOWER2000を使い,Solaris8上でOracle8.1.7を稼働させたケースで,SANよりNASの方が性能が高かった。例えば4GバイトのDBを作成するのにSANのSymmetrix 8730では2分55秒かかったが,NASのNetwork Appliance F940では1分3秒だった。
 また,NetAppのNAS製品で350Tバイト規模のRDBMSを運用している事例もある。

---SANは,異機種間の相互接続性が問題になる
 野放図な相互接続性の保証はしたくない。SANでシステムを構築する場合には,当社が動作保証する組み合わせに限定する。具体的には,OEM供給を受けている米Brocade Communications Systemsのファイバ・チャネル・スイッチとのセットで販売する。

---既にSANを構築しているユーザーは,リプレースが必要ということか
 そういうことになる。