クラスタリング・ソフトLifeKeeper(日本ではテンアートニが販売)の開発元である米SteelEye Technology Vice President Arlington Glaze氏(写真)に,米国のクラスタ市場動向などを聞いた。SteelEye Technologyは1999年,米NCRからLifeKeeperを買収し,全世界で5000ライセンス以上を販売している。Glaze氏は,厳しいコスト削減要求のため,クラスタリング・システムでもRISC UNIXからPCサーバーへのシフトが起きており,特にLinuxの採用が増加していると語る。2002年には,同社のクラスタリング・ソフトはOS別ではLinux版が最も出荷本数が多くなると予想する。(聞き手は吉田 晃=日経オープンシステム)

Arlington Glaze氏
---米国の市場状況は

 深刻な景気の後退により,情報化投資の予算は厳しく抑えられている。これまで,高度な耐障害性を要求されるシステムは,数億円かけてRISC CPUを搭載したUNIXサーバーで構築してきたが,そのようなミッション・クリティカルなシステムも,コスト削減の対象として見直されてきている。信頼性を落とさずにコストを抑えるため,Linuxを搭載するPCサーバーでクラスタリング・システムを構築しようとするユーザーが増えてきている。

---Linux版,x86向けSolaris版,WindowsNT/2000版の割合は

 x86向けSolaris版は製品としてはラインナップに含まれているが,需要はほとんどない。ワールドワイドで言うと,2001年度はWindows版が55%,Linux版が45%というライセンス数の比率になる。2002年度は,Linux版が多くなり,Linux版とWindowsNT/2000版の比率は,6対4になると予想している。
 WindowsNT/2000よりもLinuxが伸びると予想している理由は2点ある。一つは,(Code RedやNimdaなどの)ウイルス対策がWindowsNT/2000では避けられない点。もう一つは,1人のプレーヤがOSからアプリケーションまでをコントロールしている状況は,ソフトウエア・ベンダーやインテグレータ,企業ユーザーにとって良いことではないと気付き出した,ということだろう。

---どのようなユーザーがLifeKeeperを利用しているのか

 典型的なユーザーとしてはASP(Application Service Provider)業者などDBMSを利用する企業が多い。実際にミッション・クリティカルな業務に利用しているユーザーとしては,クレジット・カード会社のチリVission社,第一勧銀システム開発などが好例だ。これらユーザーは,DBサーバーの可用性を高めるために利用している。LifeKeeperを採用した理由は,インストールが容易なこと,RISCベースのUNIXより導入コストが低くなることなどが挙げられる。

---今後の製品計画は

 LifeKeeperは,OracleやDB2,Apache,sendmailなど様々なサーバー・ソフトウエアに合わせて,フェイル・オーバーの際に必要な処理を行うApplication Recovery Kit(ARK)と呼ぶソフトウエアを提供している。これにより,ASKを提供済みのソフトウエアに対してはきわめて短時間でクラスタを構築することができる。
 今後ARKのラインナップとして,独SAPの「R/3」向けARK,米Oracleの会計用ソフト「Oracle Financial」向けARKをそれぞれ2002年の第1四半期,第2四半期に出荷する予定だ。いずれも価格は未定だ。
 さらに,ARKを作成するためのSDK(Software Development Kit)をパートナに紹介し,ARKを開発してもらうことで様々なソフトウエア向けのARKをさらに増やしていく。すでに,日本のあるパートナが,PostgreSQL向けARKを開発中だ。
 また,新製品ではないが,Red Hat LinuxやMiracle Linuxなどの各種Linuxディストリビューションのバージョン・アップへも積極的に追随していく。