米Oracleは,Webアプリケーション・サーバーの新版「Oracle9i Application Server(Oracle9i AS) Release2」を2002年3月に出荷する予定だ。来日中の米Oracle Vice President,Oracle9i Application ServerのThomas Kurian氏(写真)に機能強化のポイントを聞いた。(聞き手は,森山 徹=日経オープンシステム)

Thomas Kurian氏
---250を超える新機能を実装したと聞いたが,ポイントを教えてほしい
開発環境では,(1)J2EE1.3への対応,(2)Webサービスへの対応強化,(3)EIP(Enterprise Information Potal)構築機能の強化――が大きなところだ。具体的には,(1)ではEJB2.0やServlet2.3など最新のJ2EE仕様を取り込んだ。

 (2)のWebサービスは,SOAP1.1やWSDL1.0といった最新仕様をサポート,米Microsotの「.NET」との互換性確保にも力を入れた。また,SAP R/3,RosettaNet,ebXMLなどとの連携を強化し,ポータル構築も支援する。

 実行環境では,パフォーマンスを向上させ,クラスタリング機能によって拡張性や耐障害性も高めた。

---パフォーマンスを向上させた機能は
 まず,(HTMLコンテンツをキャッシュする)Webキャッシュの性能を上げた。パーシャル・ページ・キャッシングによってオブジェクトの出し入れを高速化し,クラスタリングにも対応させた。ほかにも,HTTPサーバー(Apache)の負荷分散機能を強化し,Javaキャッシング・サービス機能によってDBアクセスを高速化するなど,エンド・ツー・エンドでパフォーマンスの向上を図った。

---(DBのオブジェクトをキャッシュする)DBキャッシュは強化していないのか
 Release1では参照用のデータしかキャッシュできなかったが,今後は更新処理も行えるようにして,DBの機能として統合していく予定だ。また,Release2ではJavaオブジェクト・キャッシュと呼ぶ機能を新たに備え,アプリケーションのパフォーマンス向上を図った。

---PL/SQL回りの機能に変化はないのか
 OWA(Oracle Web Application)パッケージを使って,ダイナミックHTMLを含むWebページをPL/SQLで作成できるようにした。また,PL/SQLのストアド・プロシージャをWebサービスに対応させることも可能だ。

---最後に,WebLogicやWebSphereとの“違い”を聞きたい
 シングル・プロダクトかどうかという点が,大きな違いだと思う。Oracle9i ASは,J2EEからWebサービス,LDAPやセキュリティ機能,ポータルやワイヤレス機能に至るまでを一括提供するシングル・プロダクトだ。これに対して,例えばWebSphereはシングル・ブランドに過ぎない。そのため,様々なツールなどを組み合わせて使う必要がある。この差は,コスト・パフォーマンスとして現れる。また,管理コンソール(Oracle Enterprise Manager)から,Oracle9i ASとOracleデータベースを一元管理できるなど,Oracleユーザーにとって使い勝手が高いことも,もちろん強みの一つだ。