日本アイオナテクノロジーズは2001年12月12日,Webサービス対応製品群「Orbix E2A」の国内出荷を正式発表した。製品群は大きく,(1)Webアプリケーションの開発実行環境となる「アプリケーション・サーバー・プラットフォーム」と,(2)アプリケーション統合を実現する「Webサービス・インテグレーション・プラットフォーム」に分けられる。まず(1)の全製品と(2)の一部の製品を12月25日に,続いて残りの(2)の製品を2002年1月28日に出荷開始する(関連記事)。発表に際し,来日中のアイルランドIONA Technologies Vice President of Product Marketing のJohn Rymer氏(写真)に製品の特徴などを聞いた。(聞き手は,相馬 隆宏=日経オープンシステム)

John Rymer氏

---「Orbix E2A」を開発した経緯は

 これまでのアプリケーション統合は,CORBAやFTP,Message Queuing,Javaなど様々な技術を使い,その都度場当たり的に対処していた。そのため,アーキテクチャの統一されていない“スパゲッティ”のような複雑な状態になっていた。また,EAI(Enterprise Application Integration)ツールを使う場合では,平均で12カ月の開発期間がかかる上,製品コストも平均で50万ドルと高価だった。

 「Orbix E2A」は,アプリケーション統合に必要な機能を標準技術であるWebサービスで実装した初のアプリケーション統合製品だ。ベンダー独自の技術に依存しない“サービス・オリエンテッド”なアーキテクチャと言える。アプリケーション統合を標準技術を使った統一の方法で実現できるため従来の問題を解決できる。

---海外では,どんな用途でWebサービスの利用が進んでいるのか

 大きく2つの動きがある。一つは,社内システムの統合だ。我々の顧客の中にも部門ごとにそれぞれ独自の技術を使って構築したシステムを標準的な技術を用いて統合,情報共有しようとしているところがある。もう一つは,企業間(BtoB)連携に関する動きだ。RosettaNetなどのビジネス・プロセスをSOAPを使って実現しようとしている。

---「Orbix」の既存ユーザーにとって新版のメリットは何か

 従来製品では,企業間(BtoB)のシステム連携用と社内システムの統合用とで製品が別々になっていた。例えば社内システム統合用の製品ではファイアウオール越しの通信がしにくいといった制約があるなど,各製品の適用領域が限定されていた。

 新版では,企業間連携でも社内統合でもどちらも制限なく利用できる。また,ビジネス・フローの定義も従来版では製品が提供する独自形式のタスクのみしか指定できなかったが,新版ではWebサービスを呼び出せるようになるため,より自由度の高いフローを定義できる。さらに,機能をWebサービスとして実装してあるため,我々の製品の機能が気に入らなければ部分的にWebサービスに対応した他社製品に置き換えても構わない。

---新版への乗り換えは容易か

 既存のAPIは引き続きサポートしているため,アップグレードするのに それほど大きな変更作業は必要ないと考えている。

---Webサービス対応のWebアプリケーション・サーバーが増えているが「Orbix E2A」の優位性は何か

 Webサービス対応の部分については,ほかの競合製品と比べて本質的に大きな違いはない。ただし,多くの製品がJ2EEを標準とするのに対して我々の製品は,J2EE準拠だけではなく,CICSなどの配下で稼働するCOBOLやPL/1で開発したアプリケーションと連携できる。また,CORBAで10年以上培ってきた基盤があるため堅牢性においては他社製品より優れていると考えている。

---Webサービスはセキュリティやトランザクション管理といった点で課題を残すが

 確かにセキュリティやトランザクション管理については現時点では標準がない。しかし,セキュリティに関して言えばSOAPはHTTPをベースにしているためHTTPSによる暗号化などが利用できる。一方,厳しいトランザクション管理を要求されるような用途にはまだWebサービスは使えないだろう。CORBAのOTS(Object Transaction Service)のような仕組みが必要になってくる。Webサービスで高度なトランザクション処理を実現するのはまだ先だ。ただし,通信時のエラー対応は今でも十分な機能を備えている。「Orbix E2A」は,プロセスのステータスをデータベースで管理しており障害時にはリカバリ処理を実行することが可能だ。