ターボリナックスの創業者であるCliff Miller氏が,ベンチャ企業,米Mountain View Dataを創業した。オープン・ソース・ソフトウエアをベースに製品化を進め,まずはLinuxマシンのデータをネットワーク経由で複製するツールを2001年5月に出荷した。同氏に,製品の特徴や今後の計画などを聞いた。(聞き手は高橋 信頼=日経オープンシステム)

Cliff Miller氏
---ターボリナックスを離れ,新しいベンチャ企業を興した経緯は。

 私はパシフィック・ハイテックという会社を日本で創業し,後にターボリナックスと改称して米国に本社を移した。1999年にベンチャ・キャピタルなどの投資を受けたが,ベンチャ・キャピタルが送り込んできた経営陣と意見が合わなくなってきた。そのため2000年夏,米TurboLinuxを離れた。同じころ,現在Mountain View Dataの副社長兼CTO(Chief Technical Officer)を務めているPeter J. Braamも(別の理由で)米TurboLinuxを離れたことを知り,彼と一緒に会社を興すことにした。

 対象とするマーケットは,ストレージ(記憶装置)だ。ストレージのメーカーはたくさんあるが,ほとんどはハードウエア・メーカー。我々は,ソフトウエアからアプローチする。Linuxなどのオープン・ソース・ソフトウエアを使うことで,ストレージ装置の価格対性能比を大幅に向上させることができると考えている。

---どのような製品を出すのか。

 Peter J. Braamが中心となっているオープン・ソース・プロジェクトInterMezzoの成果を製品化する。

 最初の製品として,2001年5月に分散ファイル・システムを構成するためのソフトウエアMVD Syncを出荷した。ファイル・システムをネットワークを介して複製し,分散ファイル・システムを構成するツールだ。特徴は,Linuxのカーネルを改良してOSレベルで処理しているために高速なこと。カーネル・レベルで変更のログを記録しており,ファイルが更新されると,複製元から複製先に更新データが送られる。あるいは,ファイルが必要になった時点で,更新元のサーバーから最新のデータを取得することで,複製のための負荷を小さくすることもできる。オープン・ソース版にGUIインストーラや管理ツールを付け,製品として提供する。

 次に製品化するのは,ファイル・システムのスナップショットを記録するためのソフトウエアMVD Snap。2001年6月の出荷を予定している。このツールを使えば,システムの運用を止めることなく,ある時点でのファイル・システムの内容を保存できる。ファイルを更新すると,見かけ上新しいデータに置き換わるが,スナップショットを取った時点のデータも保存される。元のデータをバックアップすることで更新を停止することなく,ある時点でのデータを後でバックアップできるし,元のデータに戻すこともできる。これもカーネル・レベルで処理している。

 その後,マルチメディアなどのサイズの大きなデータを複製するためのソフトウエアMVD Streamを2001年8月に,Linuxを搭載したPCサーバーをSAN対応ディスク装置として使用できるようにするためのソフトウエアLinuxDiskを2001年第4四半期に出荷する予定だ。LinuxDiskは,Linuxを使うことでSANを安価に実現することを狙っている。2002年か2003年には,Lustreと呼ぶ,大規模分散ストレージ・クラスタを構成するためのファイル・システムを出荷したいと計画している。

 いずれの製品も,直接エンドユーザーに販売することはない。我々がハードウエア・メーカーなどにOEM提供し,ハードウエアに組み込まれた形などで発売されるだろう。価格はOEMパートナが決めることだが,例えばLinuxDiskを採用したSAN対応ストレージは,我々の予想では,1Tバイトのディスク装置を1000万円以下で商品化できるはずだ。