日本ガートナーグループのデータクエスト部門は2001年5月10日,ASP(Application Service Provider)の国内市場規模推定と予測を発表した。推定によれば,2000年(暦年ベース。以下同じ)の国内市場規模は158億円で,同社が1999年3月に発表した2000年の市場規模予測値(254億円)の6割程度にとどまった。実績が予測を下回った原因としては,ユーザーのASPへの認識度が予想よりも拡大しなかったこと,各業種に特化したアプリケーションのASP投入が遅延したこと---などがあると同社は見ている。また,今後の市場は2000年から年平均成長率76.7%で拡大し,2005年に2724億円に達すると予測している。

 この調査では,提供するASPサービスの種類によって,(1)電子メールやグループウエアの機能をネット上で提供する「コラボレーション系ASP」,(2)財務会計,人事/給与など企業の共通部門向けサービスを提供する「バックオフィス系ASP」,(3)営業支援や顧客サービスの機能をネット上で提供する「フロントオフィス系ASP」,(4)購買/調達業務といった企業間電子商取引サービスを提供する「EC系ASP」,(5)各事業の業種に特化したサービスを提供する「業種特化系ASP」---の5つに分類した。

 コラボレーション系は,現在,最も導入が進んでいる分野であり,2000年ASP市場全体で約47%のシェアを占めている。各ASPベンダー企業は今後,コラボレーション系を低価格化し,そこで獲得した顧客に対して収益性の高いASPサービスを提供していく,と同社は見ている。

 バックオフィス系は,ASP市場全体で約12%と低いシェアにとどまっている。グループ企業の連結会計などで需要はあるが,カスタマイズや他のシステムとの統合といったニーズが高い上,多くの企業でシステム化が進んでいる分野なのでASPへ置き換える企業が少ないというのが同社の見方。今後は,中堅・中小企業を中心に,人事/会計分野などでユーザー企業の業務を代行する「BSP(ビジネス・サービス・プロバイダ)」の利用が進むとも予測している。

 フロントオフィス系は,ASP事業者側のシステム開発が遅れているため,ASP市場全体の4%にとどまった。顧客情報管理システム「CRM」などは,ユーザーの導入意欲が高いが企業の独自性が高いため,今後も限定的な利用にとどまると同社は予測する。

 EC系は市場全体の約20%を占めている。ユーザーが独自開発した場合にかかる負担が多い分野のため,ASP導入率が高い分野として今後も堅調に推移する見込み。

 業種特化系は,市場全体の20%弱を占める。2000年末から市場の中心を担うようになり,システム化が遅れていた業種,新制度を導入する分野,複数の拠点を持つ業種---などで需要が高まる模様だ。

 今後のASPの展開について同社は,単にネットワークを介してアプリケーションを提供するだけでなく,複数の企業が共同で業務を進める際の基盤としての利用や,業務そのものを請け負うBSPの利用など,形態を変化しながら拡大していくと見ている。

武田 麻巳=ニュース編集部)